「べき論」が対立したときはどうする?

 最後に、2つの注意点をご紹介しましょう。いずれも「べき論」の妥当性に関するものです。

 まず、ここまでのべき論は妥当性、汎用性が高いものでしたが、一定の説得力があるべき論同士がぶつかることが往々にしてあります。その場合はどう考えればよいのでしょうか?

 例として「成長のためには、特に若いうちはどんどん仕事をするべき」という意見もあれば、「勤務時間に関するコンプライアンスを守ることは必須」というべき論もあります。こうした場合には、それぞれを実現した会社のどちらがより良い会社になるかを調べられるといいでしょう。ただ、そうした都合のいい調査結果はなかなかないものです。その場合は、それぞれのパターンについて思考実験をしてみるといいでしょう。そうすると、現時点では前者に軍配が上がりそうです。このケースでは、カギとなるのは従業員の期待値でしょうから、しっかりコミュニケーションしたうえで、納得感を持ってもらうことが必要です。また、企業の置かれた状況(大企業なのかベンチャー企業なのか等)なども当然考慮すべきです。

「べき論」だって変化する

 第2の注意点は、べき論の汎用性です。「PDCAをしっかり回すべき」というのはかなり汎用性が高く、筆者は例外を見たことがありません。イノベーションのようにPDCAサイクルと相性の悪い企業活動ももちろんありますが、企業全体としてはやはりPDCAがしっかり回っている方が好ましいといえます。

 一方で、「数十万円もする高額な商品はEコマースではなく通常のリアルチャネルで対面で売るべき」はどうでしょうか。これは十数年前までならともかく、Eコマースのインフラが整ってきた昨今、必ずしも正しいとはいえないでしょう(筆者は20万円程度のエアコンをアマゾンで買ったことがあります)。むしろ、古いべき論にこだわる方が、時代に取り残される可能性が高そうです。

 そこで筆者がお勧めするのは、「べき論」の「スタート/ストップ/コンティニュー」です。これは組織の中で行われていることについて、「新たに始めるべきこと、やめるべきこと、続けるべきこと」を検討することです。その際には、自分が当然と感じている「べき論」を時々「本当に今でも有効か?」と半ば強引に疑ってみることに加え、他社の状況や社会情勢なども当然考慮します。こうした自身を客観的に見つめる活動が、好ましい結果をもたらすことは多いのです。

★効果的なシーン

本来好ましい「あるべき姿」に向かううえで何がボトルネックや障害になっているかを抉り出す

★一目置かれるためのポイント
①質問を繰り返すことで原因を探る
②非合理的なことに敏感になる
③「べき論」の妥当性に注意する

(本記事は『グロービス流「あの人、頭がいい!」と思われる「考え方」のコツ33』〔グロービス著、嶋田毅 執筆〕の抜粋です)