ワクチンによって重篤な障害が残ったら
予防接種健康被害救済制度で補償される

 予防接種法で定められている予防接種は、そのワクチンの目的に応じて、市町村や都道府県が住民に対して接種を勧める「接種勧奨」をするかどうか、国民がワクチンを打つように努める「努力義務」を求めるかどうかも決められている。

 ちなみに、現在の日本の予防接種における公的関与は、「勧奨」「努力義務」がギリギリで、接種を強制するものではない。接種しない人への罰則規定があるわけでもない。いずれのワクチンも、あくまでも本人(や保護者など)が納得した上で、接種するかどうかを決めることになっている。

 そして、ワクチンの副反応によって健康被害が出たときの補償内容も、接種勧奨と努力義務が課されているかどうかによって変わってくる。

 臨時接種は、まん延防止の観点から接種勧奨も努力義務も課せられており、現行法のなかでは、接種を強く進めるものに分類されている。
 
 だが、COVID-19のワクチンは、初めて使われるものなので評価が確定しておらず、使用実績も浅い。そのため、今回は、臨時接種のなかの特例として、接種勧奨も努力義務も「原則」にとどめ、必要に応じて例外的に、これらの規定を適用しなくてもよくなっている。

 とはいえ、感染拡大を抑えるためには、できるだけ多くの人が安心してワクチンを接種できる環境を整える必要がある。接種費用を無料にすると同時に、副反応による健康被害が出た場合の補償についても、高い水準のものが設定されている。

 そもそも一般的に予防接種による副反応は、接種した部分の痛みやかゆみ、発熱など比較的軽いものがほとんどである。だが、非常にまれではあるものの、神経障害や脳炎など重大な健康被害を引き起こす可能性もゼロではない。

 例えば、ジフテリア、百日ぜき、破傷風、ポリオを予防する4種混合ワクチンの場合、2012年10月~2013年7月までの間に、約213万回の接種が行われ、89件の副反応が報告されている。そのうち、医師が重篤と判断したものは49件。全体の0.0023%(10万件あたり2.3回)という、非常にまれなケースではあるが、健康被害が認められている(厚生労働省の資料より)。

 そのため、ワクチンを接種したことで、病気になったり、障害が残ったりするなど、重大な副反応が出た場合は、国の「予防接種健康被害救済制度」で補償されることになっている。