ニュージーランドは酪農の他に、園芸農業や畜産業も発達しています。特に羊の飼育頭数は2682万頭と、人口の約5.4倍もの羊がいます。

 世界第2位の羊肉輸出国であり、世界合計に対して33%、第1位のオーストラリアが36%ですから、2ヵ国で69%を占めています。ちなみに、牛は1015万頭で、人口の約2倍です。

 肉類は貴重な輸出品目で、1882年の冷凍船の就航から世界市場への輸出が始まりました。冷凍船の就航は高鮮度保持を要する肉類の輸出を加速させたのです。

日本が学ぶべき文化とは?

 ニュージーランドの酪農は低コスト経営が可能だとお話ししました。利益を最大化できる酪農は人気があり、就農を希望する若者が多いのです。

 しかし、いきなり広大な土地を取得することはできません。そのためニュージーランドでは若者が高齢の経営者から土地を借りて、借地農として「酪農デビュー」します。利益は折半です。ある程度技術を身につけ、資金が貯まると土地を購入して独り立ちします。そして自分が年老いたとき、また次世代の若者に土地を貸すのです。

 世代交代が上手くいくことは、持続可能な経済発展の最重要課題といえるでしょう。日本におけるバブル崩壊後の「失われた20年」は、世代交代が上手くいかなかったことも原因の1つかもしれません。

 若者たちは、ときに迷い、壁にぶつかり、そして明日を夢見ています。そんな若者たちが次世代を創ります。人はいつか、そんな若者たちを支える側に回るときがきます。ニュージーランドに学ぶべきは、実はこういうことなのかもしれません。
(本原稿は、宮路秀作著『経済は地理から学べ!』を抜粋、再構成したものです)