宮路:パンジャブ州は、インドの中でも農業を主産業とした州といえます。ただ、こうした産業構造は既得権益化しやすいものです。

 これは産業構造の転換を最も嫌う州で発生したデモなんだなと思ったわけです。デモの様子を映像でみると、頭にターバンを巻いた人たちがデモに参加していました。ターバンといえば、シク教における着用義務があります。

 知識があれば、多面的なものの見方ができます。重ねて言いますが、その1つが「地理」なんです。

 私はYahoo!ニュースのオーサーでもあるので、このインドの農業デモについてヤフーニュースに寄稿しました。PVは全然伸びなかったですけどね(笑)。

──宮路さんは、昔から見聞きするいろんなものに興味を抱いて、それを調べていくみたいなところがあったんですか?

宮路:言われてみれば、それは小学生の頃からあったような気がします。

 私の出身は鹿児島市なんですが、鹿児島市に「パース通り」という通りがあるんです。子どもの頃、「どうしてパース通りというのか?」と父親に聞いてみたら、「オーストラリアのパースという都市があって、そこと友好関係を結んでいるから」と教えてもらったんです。

 普通なら、その話で終わりなのかもしれませんが、私は家に帰ってから地図帳でパースの場所を確認して、「こんな遠い国と友好関係を結ぶってどういうことだろう?」といろいろ調べたくらいです。

──もう、その頃から今の宮路さんの興味の持ち方というか、それをさらに深堀りしていく姿勢は表れていたんですね。

宮路:本当にそうですね。『経済は地理から学べ!』のような本を書くことはすごく楽しいんですけど、アウトプットそのものが楽しいかといえば少し違うんです。

 アウトプットするためには必ずインプットしなければなりません。そのインプットが何より楽しいのだと思います。知的好奇心が一番にあって、知的好奇心が満たされると、人に伝えたくなる。

 私にとって地理とは、尽きない知的好奇心を満たしてくれるものです。そこで感じたおもしろいものをこれからもどんどん伝え、もっと多くの人に地理を学んでもらえたらと思っています。

【大好評連載】
第1回目 「日本は世界一の超高齢社会」解決のヒントはM字カーブにあり
第2回目 「砂漠に文明ができた理由」を150字以内で説明すると?
第3回目 スエズ運河がもっと早くできていれば、アパルトヘイトはなかった!?
第4回目 「インドネシア VS アフリカ」これから経済成長するのはどっち?
第5回目 「西郷隆盛は西南戦争に勝つ気がなかった」論の意外すぎる根拠とは?

地理を学ぶと、経済ニュースがめちゃくちゃ面白くなる!宮路秀作(みやじ・しゅうさく)
代々木ゼミナール地理講師、日本地理学会企画専門委員会委員
鹿児島市出身。「共通テスト地理」から「東大地理」まで、代々木ゼミナールのすべての地理講座を担当する実力派。
地理を通して、現代世界の「なぜ?」「どうして?」を解き明かす講義は、9割以上の生徒から「地理を学んでよかった!」と大好評。講義の指針は、「地理とは、地球上の理(ことわり)である」。
生徒アンケートは、代ゼミ講師1年目の2008年度から全国1位を獲得し続けており、また高校教員向け講座「教員研修セミナー」の講師や模試作成を担当するなど、いまや「代ゼミの地理の顔」。2017年に刊行した『経済は地理から学べ! 』はベストセラーとなり、これが「地理学の啓発・普及に貢献した」と評価され、2017年度の日本地理学会賞(社会貢献部門)を受賞。大学教員を中心に創設された「地理学のアウトリーチ研究グループ」にも加わり、2021年より日本地理学会企画専門委員会委員となる。
またコラムニストとして、「Yahoo! ニュース」での連載やラジオ出演、トークイベントの開催、YouTubeチャンネルの運営、メルマガの発行など幅広く活動している。著書に『経済は地理から学べ! 』(ダイヤモンド社)、『目からウロコのなるほど地理講義(系統地理編)・(地誌編)』(学研プラス)などがある。
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