実際、日本の輸出依存度は13.7%しかなく、ドイツの38.3%、オランダの61.2%よりも小さいのです。ただ、ドイツやオランダはEUに加盟しているので、日本とは土壌が異なります。

 一方、輸出依存度が100%を超える国・地域もあります。シンガポールや香港です。これには中継貿易が背景にあります。日本のように人口が多く、国内需要が大きい国では、その国内需要を取り込むことが重要です。

 しかし、シンガポール(570万人)や香港(750万人)は人口が少ないこともあり、国内、域内の生産物で国内市場が一瞬で飽和します。そのため積極的に海外需要を取り込む必要があるのです。

 そもそも人口が少ないため、生産物はそれほど多くありません。また国土面積が小さいため、鉱産資源が乏しく、これらの輸出で外貨を稼ぐことはできません。そこで地理的な優位性を活かし、古くから中継貿易を行ってきました。他国から輸入した生産物を第三国に輸出するのです。

「需要と供給」を読むのが難しくなった

 輸出総額を基本とした統計においては、最終需要に基づく輸出依存度の実態を把握することは難しいと考えられています。

 例えば、日本企業が中国で現地法人を設立し、そこに向けて中間財を輸出し、これを輸入した現地法人が加工。そして最終財としてアメリカ合衆国に向けて輸出したとします。

 この場合、日本で生産された生産物の最終需要地はアメリカ合衆国ですので、日本の輸出は実質的にアメリカ合衆国の国内需要によって増減することになります。しかし、日本から中国への輸出額だけが計上されるため、実態の把握が難しくなるのです。

(本稿は、書籍『経済は統計から学べ!』の一部を抜粋・編集して掲載しています)