ハーバード式不動産ファイナンスでは、
出口(売却)をいつも想定しておく

 一棟もののアパートなど、少しまとまった額の総投資額でのスナップショット(BOE分析)ともなれば、ほぼ自分の勤め人としての年収と同額を稼いでくれていることにほくそ笑む方もいるだろう。

 やっと稼働し始めて、1年目の確定申告の時期に貯まった家賃が記載された通帳を見るのは、何とも気分がよい。

 しかし、投資の物語は始まったばかりだ。そしてこの物語が驚異のリターンを生んでくれる壮大な映画になることを投資実行前に知れるとしたら、どうだろう?

 これがハーバード式不動産ファイナンスの極意でもあるPro Forma(プロ・フォルマ/*資産運用の未来予想図)に注目するという考えだ(*もともとは「形式上の」というラテン語が語源だが、不動産においては相応しい言葉で意訳している)。

 毎年の不労所得に注目するのが単年のスナップショット、BOE分析だが、その物件を一生持ち続けるのだろうか? 5年後、10年後に大きな修繕費用が必要になったり、空室が一気に生まれたり、または景気の動向や競合物件の出現により家賃収入が縮小してゆかないだろうか?

「持ってよし、売ってよし」が不動産賃貸経営の最強戦略なので、ハーバード式不動産ファイナンスでは出口(売却)をいつも想定しておくことがコア・アイデアとなる。

 一定期間の間、物件を持ち続け、家賃収入を享受しつつ、売却できる絶好の機会が訪れたら、迷わず売り、大きな売却益を得る。そして、この時間軸を持った一連の投資とリターンの流れを追えるように映画のようにしたもの、この将来予測をすることをプロ・フォルマを組むと言う。

 要は家賃収入と売却益のダブルで儲かる「資産運用の未来予想図」を立てることに他ならない。

 映画には始まりがあれば、起承転結という具合に「ジ・エンド」もある。ここまで観て初めて、映画に感動することもできるし、明日への活力をもらえたり、一緒に観ている人と喜怒哀楽を共有し楽しんだりすることもできる。不動産でも仕込みがあり売却がある。

 ここまでの時間軸をファイナンス的に描いてゆくことがプロ・フォルマを考えるということだ。そしてプロ・フォルマを描いてみると、驚異のリターンの物語を投資する前から見てみることが可能となる。まさか計画通りに行ったらどうしよう?

 そんな手に汗握る感覚にも陥るし、宝くじで億円単位を引き当てたり、株価を祈りながら毎日睨むことがバカバカしくなるだろう。不動産投資の映画(プロ・フォルマ)を着想し、実行した時点で、映画が終わるころには、驚異のリターンが手に入っていることだろう。

上田真路(うえた・まさみち)
建築家・不動産投資家
KUROFUNE Design Holdings Inc. 代表取締役CEO
ハーバード大学デザイン大学院で不動産投資と建築デザインを学び、投資理論とデザインの力を融合させたユニークな不動産投資を行う。
鹿島建設入社4年目に不動産投資を開始。数々の不動産投資セミナーに足を運び、不動産関連書籍を数十冊読破。そんな中で出会ったメガ大家集団をメンターに持ち、指導を仰ぎながら不動産投資をスタートする。最初に行った東京・神楽坂での新築マンション開発では超狭小地に苦労し、辛酸を舐めつつも独自の不動産投資スタイルを確立する。現在5棟の超優良物件を保有。保有物件の中では投資額が4年間のうちに26倍になったものもある。
1982年高知県生まれ。早稲田大学理工学部建築学科、同大学院卒業後に鹿島建設入社。
大学院卒業時にリゾートホテル開発プロジェクトにより早稲田大学小野梓芸術賞を受賞。
同社では国内外で建築設計や大規模な都市開発業務に従事。鹿島建設社長賞、グッドデザイン賞、SDレビュー賞などを受賞。2016年、ハーバード大学デザイン大学院(GSD)へフルブライト留学。2018年、GSD不動産デザイン学科を卒業、外資系不動産ファンドでの投資業務を経験した後、KUROFUNE Design Holdings Inc.(デザイン事務所兼不動産ファンド会社)を創業し独立。現在はハーバード学生寮生活で得た原体験をもとに、住まいと学びを融合させた国際学生寮「U Share」を開発運営する。また、慶應義塾大学SFC特任講師、早稲田大学特任講師として「不動産デザイン」について教えている。初の著書に『ハーバード式不動産投資術 資産26倍を可能にする世界最高峰のノウハウ』(ダイヤモンド社)がある。