英国でスポーツイベントが盛り上がる状況にした、判断と根拠

 英国では、デルタ株が猛威を振るい、7月10日には新規感染者数が3万人を超え、19日には5万人に達すると予測されている。それにもかかわらず、ボリス・ジョンソン首相は、集会や飲食店の制限の解除など、感染抑制のための制限措置の大半を7月19日に解除し、経済・社会を正常化すると明言した。

 また、先日、テニスのウィンブルドン選手権の男女の決勝が開催されたが、観客は新型コロナ検査の陰性証明かワクチンの2回接種を示す証明書を提示して入場したという。

 さらに、サッカー欧州選手権(EURO2020)の決勝が、ロンドンのウェンブリー・スタジアムに6万人の観客が入場して開催された。イングランド代表の55年ぶりに主要大会での決勝進出に英国は盛り上がった。惜しくもPK戦で敗れたが、サポーターがイングランド国旗を振りながらスタジアム周辺やパブで盛り上がっている姿が日本でも放映された。

 ジョンソン政権が、経済・社会の正常化に大胆にかじを切っているのは、科学的根拠に基づいている。イングランド公衆衛生庁が、ワクチンを2回接種すれば入院や重症化を防ぐ有効性は、米ファイザー製で96%、英アストラゼネカ製で92%という研究結果を公表したからだ(『ファイザー製とアストラゼネカ製ワクチン、2回接種でインド型変異株に有効=英研究』BBC News)。

 この研究結果を受けて、ジョンソン首相は、「ワクチン接種が進み、感染と死亡の関係を断ち切ることができた」として、今後新規感染者が増えても、入院患者や死者はそれほど増えることはないと判断したのである。

 この英国の状況とまったく対照的なのが、4度目の「緊急事態宣言」発令で、無観客で東京五輪の開会式を迎えることにぼうぜんとしている日本だ。

 ウィンブルドンやEURO2020が「科学の勝利」を高らかに宣言する大会となった一方で、東京五輪は、日本が「非科学的な闘い」を延々と続ける姿を世界にさらす大会になる。どうしてこうなってしまったのだろうか。