公正証書遺言は「こう」作られる

 ここで、公正証書遺言を作る流れを簡単に説明します。

 まず公証役場に連絡して、どのような内容の遺言書にするかを伝え、遺言書の原案を作ってもらいます。その原案の内容に問題がなければ、日程を調整し、証人2名を連れて公証役場に行きます。

 公証人が遺言書を読み上げ、内容に問題が無ければ、本人が遺言書に署名して完成です。遺言書の原案を作る段階では、遺言者以外の人(家族や弁護士等の専門家)が代理で行うことも可能です。

 そのため本人は、公証役場に行き「問題ないです」とだけ言えれば、公正証書遺言は作れてしまうわけです。

 ちなみに、公証役場では遺言者本人が認知症の診断を受けていることなどは聞かれません。また身元確認も、実印と印鑑証明書だけあればよく、実際に、替え玉受験ならず替え玉遺言がされた事件も実在します。

トラブルを回避するには?

 安全性をより高めるためにできることを紹介します。それは、遺言書を作成してから早い時期(できれば1ヵ月以内)に、かかりつけの主治医から「この人の意思能力は問題ない」と診断書をもらっておくことです。

 万全を期すのであれば、遺言書を作成する前と後に、2回診断書を取っておけばより安心ですね。

 遺言書を巡る争いの多くは、「この内容は故人の本当の想いではない」という、立証が非常に難しく、水掛け論になりやすいことが争点になっています。

「どこからが認知症か」という線引きは曖昧で難しいですが、「少なくとも遺言作成時点において意思能力がはっきりあった」ことを立証するのは比較的容易です。転ばぬ先の杖として、家族の絆を守るためにも念には念を入れて対策する姿勢が大切です。