社会の閉塞感に抵抗
「奴隷のように搾取されるのはご免」

 先日、中国にいる知人から、「これ見た?」とある動画のリンクが送られてきた。その動画は、2018年にNHKが放送したドキュメンタリー「三和人材市場~中国・日給1500円の若者たち~」の中国語字幕付きのものだった。「今、中国ですごく拡散されている。これまでこんな番組があるとは知らなかった」と友人は言う。

 番組では、中国の深セン郊外、巨大な就職斡旋場「三和人材市場」にいるたくさんの日雇い労働者の若者の現実が映し出されている。1日働いたら、3日休み。5元(約90円)のラーメンを食べて、野宿する生活を送る。かつては将来に希望を持っていたが結局挫折し、三和地区に集まってきた人がほとんどだ。

 筆者は放送当時日本でこの番組を見たが、3年後の今、中国で拡散され共感を得ているとは思わなかった。この番組に出ていた日雇い労働者の心情は、今の「寝そべり族」の若者たちとぴったり一致している。ちなみに、中国では彼らは「三和大神」(三和ゴッド)と呼ばれている。

 中国のネットユーザーは、「寝そべり主義」に大いに共感している。

「寝そべりは死を待つことを意味するが、それでも立ち続けて突然死になるよりましだ」
「インフレで貨幣の価値が下がっているだけではなく、われわれの努力の価値も下がっているのだ」
「もう奴隷のように搾取されるのはご免だ。寝そべりを選ぶぞ」

 現在、「90後」「00後」と呼ばれる90年代~2000年代生まれのZ世代を中心に、燃え尽きたかつてのエリートである中年層も加わって、「寝そべり」という形で、社会に対しての不満や閉塞感に抵抗している。これは「非暴力的、非協力的な抵抗」でもある。

 7月1日に、中国共産党は創立100周年を迎え、華やかで盛大なイベントが行われた。一方で、寝そべり主義が若者の間で流行している。国は未来を担う若者に希望を与えることができるのか。これからの中国にとって、喫緊の課題である。