『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「イノベーションと企業家精神」を読んだら』【試読】Photo:PIXTA

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プロローグ

 夢には夢がなかった。目標もなかった。ただ毎日を、なんとなく過ごしていた。

 それでも好きなものはあった。友だちだ。夢には友だちが一人いて、その友だちが好きだった。だから、学校にはその友だちに会うために来ていた。他に理由はなかった。

 その友だちとは、中学のときに知り合った。彼女は陸上部員だった。長距離の選手で、いつも校庭を走っていた。

 その友だちが走るのを、夢はよく教室の窓から見ていた。ときには日が暮れて、彼女の姿が夕焼けに浮かび上がるシルエットとなり、やがて宵闇に溶け合ってほとんど判別がつかなくなるまで、ずっと見続けていることもあった。

 夢は、その友だちが走るのを見るのが好きだった。見ていて飽きるということがなかった。だから、その友だちが陸上部を辞めてしまったときは驚いた。そして、とても残念に思った。また陸上部に復帰してくれないかと、強く願った。

 しかし、彼女が再び陸上部に戻ることはなかった。そうして放課後になると、これまでは走っていた校庭を歩いて横切り、早々に帰宅してしまうのだった。

 ある日のこと、いつものように校庭を眺めていた夢は、その友だちが帰宅しようとしているのを見つけた。それで、ふと思い立って教室を飛び出した。

 夢は、運動をしたことがほとんどなかった。だから、走るのがとても遅かった。それでも、一生懸命走って追いかけ、校門を出たところでなんとか追いついた。そして、こう声をかけた。

「あの、すみません!」

「はい?」

「あの……どうして陸上部を辞めちゃったんですか?」

 それが、夢がその友だちと仲良くなったきっかけだった。