コロンバイン高校の銃乱射事件で息子を失ったというトム・バウザー氏はボルダーの事件が起きた夜、ABCテレビの報道番組「ナイトライン」に出演し、こう話した。

「これが新たな日常であってはなりません。スーパーで安心して買い物ができる社会でなくてはなりません。あまりにも多くの人命が失われました。自分の身にこんなことが起きるなんて思ってもみなかったと事件に遭遇した人は皆、言います。銃乱射事件に遭遇したことのない人たちに言いたい。その日が来るのを待っていてはいけない。米国の銃文化がこうした状況を生み出しました。これ以上手をこまねいていてはいけません」

 バウザー氏はコロンバイン高校の事件後、犯人の銃の購入を可能した法律の抜け穴をなくすための銃規制運動に加わったというが、彼の訴えもむなしく、その後も銃による大量殺傷事件は頻繁に繰り返されている。

 4月15日には、インディアナ州インディアナポリスにある物流大手「フェデックス」の施設で、男が無言のまま半自動小銃を発砲し、19歳から74歳の従業員8人を殺害した。あっという間の出来事だったという。

 当局によると、容疑者の19歳の男は過去に精神障害の治療歴があったにもかかわらず、攻撃用の銃を持っていたので、母親が警察に通報し、いったんは押収された。ところが、その後、彼は再び2丁の攻撃銃をどこかで購入したという。精神障害歴のある人の銃の購入を止める制度はあったが、それがきちんと機能していなかったのである。

バイデン大統領とクオモ知事が
打ち出した銃犯罪撲滅対策

 バイデン大統領は悲惨な銃乱射事件が起こるたびに、ホワイトハウスに半旗を掲げ、犠牲者を悼む演説を行っている。

 そして6月23日、大統領は「銃犯罪の急増を野放しにできない」として、違法な銃販売業者の追跡と取り締まり強化、法執行官の増強、コミュニティーの犯罪防止活動の支援などを柱とした銃犯罪対策を発表した。

 特に注目すべきは違法な銃販売業者の追跡だが、これはATF(アルコール・たばこ・火器および爆発物取締局)と各地域の警察署が共同でタスクフォースを立ち上げ、違法な銃販売を行っている業者を追跡し、取り締まりを強化するというものだ。「寛容度ゼロ」の方針で、違法行為が発覚したらライセンス剥奪も含めて直ちに罰するという。

 バイデン大統領は違法業者を「死の商人」と呼び、「彼らがお金のために違法に販売した銃が罪のない人々を殺害するのに使われている」と厳しく非難し、「徹底的に取り締まる」と宣言した。