その4:見た目無料

 4番目の「見た目無料」は、一見すると無料だが実は料金を取られているというパターン。例えば、ビジネスホテルの「朝食無料」。これは、正確には「朝食込みの宿泊費設定」という意味のはずだが、なぜかトクした気分になり、そっちのホテルを選んでしまう。

 また、ネット通販で商品を検索する時に、「送料無料」を探す人は多いだろう。「送料無料」を掲げるAショップと、送料がかかるBショップが並んでいると、勝負は明らかだ。しかし、本当にAがBより安いのかは別の話。この「送料無料」も、本質は「送料込み」かもしれないからだ。Bの価格に送料を足してからAと比較しなくては、正確なジャッジはできない。

 しかし、我々は「朝食無料」「送料無料」という文字を見ると、無料のほうがおトクに決まっていると反射的に感じてしまう。比較することを放棄させてしまうくらい、「無料」という言葉には魅力がある。そこのところを分かっている業者は、必ず必殺ワードとして「無料」を使うことだろう。

「無料」は人流さえも変えるパワー

 なぜ、人々は無料が好きなのか。その理由はいろいろあるが、ひとつは「お金を払っていない以上、絶対損することはない」と考えるからだろう。

 とにかく我々は損をしたと思うことが嫌いなのだ。それも、他人はおトクを享受して、自分だけが損をしたと感じようものなら、その痛みは倍増する。でも、無料ならば失うものはないし、マイナスになりようがない。何も払わずに手にできるんだからおトクなはずだ、それをみすみす見逃すなんて…と考える。だから、無料のドーナツがもらえる列に並んだり、「これを買うと○○がおまけでついてくる」として必要でもない新製品を買ってしまう。普段の合理的な判断力をまひさせてしまうのだ。

 さらに、「無料」は人の流れさえ変えることができる。