日本でカボチャが1年中食べられる理由
日本は北半球に位置しているため、南半球に位置しているニュージーランドとは夏と冬が逆です。日本で品薄になる冬から春にかけて、ニュージーランドでは生産時期になるわけです。
一方のメキシコは、その地理的位置から熱帯気候が展開する低緯度帯に位置しています。そのため気温の年較差が小さくなります。そして首都メキシコシティは標高2240mに位置しており、気温の逓減(だんだんと減っていく)が働いて温帯気候が展開します。
つまり、年間を通して同じような気候が展開するため、1年中カボチャの生産が可能です。もともとメキシコでのカボチャの生産は、日本から種子を導入した後に拡大しました。1980年代に、日本のカボチャ輸入業者がメキシコ北部のシナロア州の農家に生産を依頼したことが始まりとされています。
その後はアメリカ合衆国との国境付近のソノラ州での生産が始まり、現在ではメキシコ産カボチャのほとんどがソノラ州で生産されています。
日本とメキシコが経済連携協定(EPA)を締結して以降、対日カボチャ輸出量は増加しています。日本では、11~2月がメキシコ産、2~4月はニュージーランド産がそれぞれ市場に出回っています。こうして、日本では本来は夏野菜であるはずのカボチャが周年供給(1年を通して供給)されているのです。
両国以外ではトンガからの輸入がみられます。トンガの対日輸出品目は1位マグロ、2位カボチャ、3位海藻です。トンガは南半球に位置しているため、「日本への端境期出荷用カボチャの生産が可能」と考えた日本の商社が輸入を始めました。
しかし、肥料などは輸入でまかなっており、カボチャを生産するために膨大な材料費が必要です。この費用はトンガの輸出業者が農家に貸し出します。生産者に支払われる代金はわずかで、輸出業者だけが儲かる仕組みとなっているようです。トンガにとってのカボチャは貴重な外貨獲得源となっていますが、貧富の差が開くようになってきました。
加えて食生活の変化でそれまで罹患率の低かった病気にかかる人が増えました。また自動車の台数が増え、大気汚染が拡大。さらには化学肥料の使用によって地下水が汚染されるなど環境汚染を引き起こしました。
目先の得を求め、生活水準は向上して利便性が上がったものの、はっきりと目に見える形で環境の悪化がみられるようになりました。
(本原稿は、書籍『経済は統計から学べ!』の一部を抜粋・編集して掲載しています)