世界の「今」と「未来」が数字でわかる。印象に騙されないための「データと視点」
人口問題、SDGs、資源戦争、貧困、教育――。膨大な統計データから「経済の真実」に迫る! データを解きほぐし、「なぜ?」を突き詰め、世界のあり方を理解する。
書き手は、「東大地理」を教える代ゼミのカリスマ講師、宮路秀作氏。日本地理学会の企画専門委員としても活動している。『経済は統計から学べ!』を出版し、「人口・資源・貿易・工業・農林水産業・環境」という6つの視点から、世界の「今」と「未来」をつかむ「土台としての統計データ」をわかりやすく解説している。

世界一の自動車輸出国はフランス、その意外な理由とは?

フランスは輸出で稼ぐ、中国・インドは国内で稼ぐ

 自動車の輸出台数(2018年、日本自動車工業会)をみると、フランス、日本、ドイツ、アメリカ合衆国、スペイン、イギリス、中国、インド、イタリア、ブラジルなどで多くなっています。

 しかし、生産台数に占める輸出台数の割合をみると、フランスはなんと281.1%。ヨーロッパ諸国のドイツやスペイン、イギリスが80%台、イタリアが60%台なので、突出していることがわかります。

 フランスにはルノーを筆頭に世界的な自動車企業が存在しますが、実は他の国から輸入した自動車も輸出しています。自動車の輸入先はスペイン、次いでドイツです。近年はスロバキアからの輸入も増えています。

 EU域内においてはヒト・モノ・カネ・サービスの移動が自由化されていることもあり、フランスへ集められた自動車が世界市場へ向けて輸出されているわけです。ちなみに、フランスの自動車の輸出先はおよそ8割がEU域内となっています。

 輸出上位国のドイツとスペイン、イギリス、イタリアも見ていきます。国内市場がそれなりに大きいとはいえ、やはりEU域内への輸出が中心で、生産台数に占める輸出台数の割合が大きくなっています。

中国、インドは国内で稼ぐ

 生産台数に占める輸出台数の割合が低いのは、中国やインド、ブラジル、アメリカ合衆国です。中国やインドは、先進国と比較すると自動車購買層の割合は小さいですが、人口大国であるため自動車購買層が多く、生産台数に占める国内販売台数の割合が高くなっています。

 しかし、両国とも自動車の輸出台数は増加傾向にあります。特にインドでは、日系企業による輸送機器(荷物や旅客を輸送するための機器)の輸出が拡大しています。マルチ・スズキ・インディアによるアフリカ向けの自動車輸出などが有名です。

 また、アメリカ合衆国は自動車購買層が多く国内市場が大きいため、国内販売台数が多く、カナダやメキシコ、日本からの輸入台数が多くなっています。

南アメリカの動きも活発に!

 ブラジルは近年、自動車保有率が高まっており、自動車購買層が拡大しています。現状は国内市場を対象とした生産体制といえるでしょう。それでも一部の自動車は輸出しており、輸出台数の半数がアルゼンチン向けです。これはMERCOSUR域内の自動車協定が背景にあります。

(本原稿は、書籍『経済は統計から学べ!』の一部を抜粋・編集して掲載しています)