東急ストアが、楽天と組んでネットスーパー事業に参入する(顧客はネット上の店舗で注文・購入し、リアルの店舗から商品の配送を受ける)。10月から、楽天の子会社、ネッツ・パートナーズが開設する「食卓.jp」へ、まずは神奈川県の3店舗が出店を始める。将来的には10店舗まで拡大し、東急線沿線の店舗の売り上げの3%を担うことを目標とする。

「競合の侵略が激しい。それを、指をくわえて見ているわけにはいかない」。斉藤隆・東急ストア新規事業・業態開発部長は、参入の理由をこう語る。

 当初は単独参入も考えたが、「ネットスーパーの一番のネックは会員獲得。一人の会員を獲得するのには8000~1万円のコストがかかるといわれる。システム開発コストを含めると、3億~4億円かかってしまう」(斉藤部長)ため、約5300万人の会員と、システムのプラットフォームをすでに持つ楽天グループとの協働を決めた。

「2年目で黒字化が見込め、また、新規顧客獲得のメリットもある」と木下雄治・東急ストア社長も期待を寄せる。

 一方、楽天にとっても、「日用品、食品の取り扱いが多いネットスーパーは戦略的に重要」(三木谷浩史社長)。楽天市場は順調に成長を続けているが、これは地方の特産品の取り寄せなど非日常の色が濃い。日常に密着したネットスーパーの拡大でさらなる成長を目論む。

 ネッツによると、昨年のネットスーパーの市場規模は約230億円。これは全スーパー市場の0.17%にすぎないが、今後は五%までそのシェアを伸ばすとされる。

 しかし課題もある。ネットスーパーは利用が雨の日に偏るなど、需要予測が難しい。そのうえ、リアルの店舗とは売れ筋や利用者の属性が違ってくるため、従来のノウハウは通用しない。また、生鮮コンビニなども脅威。配送料のかかるネットスーパーで、「ラストワンマイルをどう攻めるか勝負どころだ」(藤川和宏・ネッツ社長)。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 新井美江子)

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