リモート環境下だからこそ、
お互いのことを知る「場」をつくる
ただ、ひとつ問題がありました。
私が勤めていた通信業界は変化が激しく、組織編成も短期間で変わってしまうため、ひとつの部署で、メンバーのことを「知る」ために、じっくりと時間をかけることができなかったのです。そこで、私は、できるだけ早くメンバーのことを知るために、さまざまな工夫をするようになりました。
なかでも有効だった方法があります。
それは、会議の場で、メンバー一人ひとりに「自己紹介プレゼン」をしてもらうという方法です。「趣味」「仕事で大切にしていること」「実現したい夢」などのテーマを設定して、一人3分で順繰りにプレゼンしてもらうわけです。
これが実に面白くて、普段、職場で接しているだけでは知り得ないような話が、次から次へと登場します。そして、それぞれのメンバーが、「どんなことを考えているのか」「どんなことをやりたいと思っているのか」がなんとなくわかってくるとともに、自然と親近感のようなものが生まれてくるのです。
もちろん、プレゼン大会をやったからと言って、いきなりメンバーとの関係性が変わるわけではありません。
しかし、そういう機会を設けなければ、知り得なかったことをインプットできたことで、その後のコミュニケーションに変化が生まれます。メンバーと「1 on 1」ミーティングをするときに、プレゼン大会で発表した内容について、さらに深く教えてもらうこともできますし、かつて私の上司がログハウスのカタログを集めてくれたように、メンバーが喜んでくれるような具体的なアクションを取ることもできます。
しかも、それと同じようなことが、管理職とメンバーの間だけではなく、メンバー同士でも起きます。その結果、メンバー同士の関係性が深まりやすく、より早くチームビルディングができるようにもなるのです。
そして、このような手法は、リモート環境下において、なおさら重要になると考えています。
なぜなら、従来のように、同じ空間に集まって仕事をしていたときには、仕事中のちょっとした雑談や、ランチや飲み会の場で、仕事以外の話をする機会があり、そのプロセスでお互いに知り合うことができましたが、リモート環境下では、そのような機会がほぼ完全に失われるからです。
これを放置すると、メンバーは孤立感を深めるばかりです。
そのうえ、成果主義的なマネジメントに振り切るようなことをすれば、管理職とメンバーの信頼関係を構築するのが困難を極めるとともに、メンバー同士の「同志意識」も希薄になり、チームワークは崩れ去ってしまうに違いありません。その結果、チームとして成果を上げる土壌が失われていってしまう恐れが強いと思うのです。
だから、リモート環境下において、管理職が強く意識すべきなのは、メンバー同士が「人間」として距離を縮めることができる「場所」をつくることです。そして、お互いのことを知り合う機会をつくることによって、一人ひとりが「人間」として尊重されていることを実感できるようにすることなのです(詳しくは『課長2.0』をご参照ください)。