新型コロナウイルスの感染拡大でダメージを受けた業界といえば、やはり人流抑制の影響を大きく受けた飲食店、ホテル・旅館、大型商業施設に出店している小売店などだろう。しかし、コロナ禍の長期化で取引関係にある業界にまでマイナスの影響が及び始めている。そのひとつである紙・印刷業界では、新たな分野に活路を見いだす動きが広がりつつある。(帝国データバンク情報部 昌木裕司)
構造的な需要減少に
新型コロナが追い打ち
新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、緊急事態宣言発出地域も追加される一方だ。飲食店の時短営業要請、スポーツやライブなどのイベント開催の制限要請、百貨店など大型商業施設の入場制限、テレワークの推進などの人流抑制が、依然として小売店、飲食店、ホテルなどのBtoC関連企業とその取引先企業にマイナスの影響を及ぼしている。
そうした企業を主要取引先とする業界でも影響を受けている。代表的なのが建設業だ。建設業の新型コロナ関連倒産件数は204件発生しているが(9月6日現在)、業種別では飲食店(339件)に次いで多く、ホテル・旅館(109件)の約2倍発生している。
特に今年に入ってからの増加ぶりは顕著だ。20年12月時点ではホテル・旅館が2番目であったが、21年1月末に順位が逆転した。
その多くは地域密着型の小規模な工務店で、近隣エリアの飲食店やホテル・旅館、アパレル小売りをはじめとする店舗・施設から工事を定期的に受注している業者も多い。新型コロナ禍での時短営業要請、休業要請による経営悪化で工事受注が激減した影響が、建設業の新型コロナ関連倒産増加の背景にあると考えられる。
今回取り上げる紙・印刷業界も、そうした新型コロナ禍の間接的な影響を受けていると考えられる業界のひとつである。