ホンダが米GMと提携強化、EV共通化だけじゃない「真の狙い」とはPhoto:Christopher Jue/gettyimages

ホンダは米ゼネラルモーターズ(GM)との提携を強化する。目的の一つは、EVの共通化など「規模の経済」の発揮だ。加えて、「企業風土変革の起爆剤」としての側面もある。組織が過去の成功体験に浸ると、新しい取り組みを志す思考は停止する。ホンダがGMとの提携を強化するのは、そうした「心の慣性の法則」を打破し、競争に生き残るためだ。(法政大学大学院教授 真壁昭夫)

電動化、脱炭素、米中対立…
世界経済のゲームチェンジ

 世界の自動車業界の再編が加速している。大手メーカーの経営統合に加え、米中の新興EV(電気自動車)メーカーの成長も著しい。そうした状況下、ホンダは米ゼネラルモーターズ(GM)とのアライアンスを強化し、EVのプラットフォーム(車台)共通化などを進める。

 業界再編の背景には、自動車の電動化、脱炭素、さらには米中対立という世界経済のゲームチェンジがある。EV化の興隆は、内燃機関(エンジン)などの「すり合わせ技術」に磨きをかけてきたわが国自動車メーカーに逆風になる可能性が高い。EV化が加速する環境変化に対応するため、ホンダはGMに加え異業種企業との提携もより重視するとみられる。

 世界の自動車業界のゲームチェンジが加速する中で、それぞれのメーカーが生き残るため政府の役割に対する期待も増すことだろう。今のところ、わが国の自動車、素材、工作機械などのメーカーは国際的な競争力を発揮している。ただ、そうした状況が今後も続く保証はどこにもない。わが国政府は、しっかりした産業政策を実行していく必要があるはずだ。その役割は小さくはない。