「目標未達成は悪!」のパワハラメールも
外部から見えない「本当の」合格者実績
臨海セミナーは取材に対し、「(ステップとの)2社間において、合意を行い、その結果として共同声明を発表している。その合意内容には、今後、両社ともこの件に関してのメディアの取材をお断りするということが含まれている」と、メールで述べるのみだ。
塾関係者の耳目を集めた「臨海セミナー事件」はひとまず幕を閉じたが、その裏にあるのは、少子化などに伴う塾のサバイバルレースの激化という構造だ。実際、全国の学習塾の数は減少傾向にある。
そして、この減り続ける子どもの奪い合いという構図は、「悪質勧誘」にもつながりかねない。
「目標未達成は悪!」「犯罪!」「戦犯!」「死!」……。

穏やかでない文言が巨大なフォントサイズで並ぶ。これは、首都圏の大手学習塾で各校舎長に配られた“実際”の社内メールである。
各校舎の生徒獲得状況が芳しくないことを、統括責任者が激しく叱責したものだが、明らかに常軌を逸した文面といえよう。
「さすがにここまでひどくはないが、教育産業とは名ばかりで数字へのプレッシャーは強い」と、別の首都圏塾幹部は明かす。
そして、その生徒獲得のための最大の武器になるのが、臨海セミナーも疑惑を持たれた、難関校への合格実績である。さらに別の首都圏塾幹部はため息をつく。
「合格実績は、塾にとって“背骨”のようなもの。それにもかかわらず、その本当の数字が消費者――、つまり生徒やその親からほとんど見えないことが問題です」
この幹部が言うように、各塾が公表する合格実績は、消費者の塾選びを左右する情報の最たるものとなる。塾も企業であり、利益の追求は当然のこと。だが、ここが信用ならないとなれば、塾同士の公平な競争ばかりでなく、消費者の選択を歪めてしまいかねない。
それ故、公益社団法人「全国学習塾協会」でも、合格実績に含むことのできる生徒の範囲について、「受験直前の6カ月間の内、継続的に3カ月を超える期間、当該学習塾に在籍し、通常の学習指導を受けた者とし、かつ、受講時間数が30時間を超える場合」などの自主基準を定めているが、順守義務はない。事実、代表者が協会で役員を務めるある大手塾さえ、協会の自主基準に満たない独自ルールで合格実績を出しているのが現状だ。