2018年2月の発売以降、「小論文のバイブル」としてジワジワ広がり、小論文対策本として異例の7万部超を記録している『落とされない小論文』。著者の今道琢也氏は、小論文を書く際のポイントは「いい文章を書く」のではなく、あくまでも「わかりやすく書く」ことだと言う。しかし、文章が苦手な人ほど「わかりやすい文章とはどういうものか」がわかっていないようだ。元NHKアナウンサーで、現在は「小論文指導のプロ」という異色の経歴を持つ今道氏に「わかりやすい文章を書く秘訣」を訊いた。(取材・構成/イイダテツヤ)

「読む人」のことをどれだけ考えているか

──今道さんが日常的に多くの人に小論文指導をしているなかで、小論文を書くときに一番意識すべきポイントを挙げるとしたら、なんでしょうか?

今道琢也(以下、今道):「読む人を意識すること」です。

 もう少し補足するなら「どうしたら、読む人にとってわかりやすいかを考えて書く」ことです。

──なんだか当たり前のようにも思えます。

今道:はい。まさに、当たり前に感じる人は多いでしょうね。

 ただ、「どうすれば読む人にとってわかりやすくなるか」の前に「いい文章を書こう」「自分が知っていることを書こう」という思いが先に立つ人が非常に多いんです。

 小論文で求められているのは「いい文章」ではなく「わかりやすい文章」です。それも、自分にとってわかりやすいのではなく、「読む人にとってわかりやすいこと」が必要です。

──「読む人にとってわかりやすい文章」っていうのは、どうすれば書けるのでしょうか?

今道:ポイントは3つあると私は思っています。

① 聞かれたことにストレートに答える
② 話をかたまりで分ける
③ どういう展開で話が進んでいるのかをわかるようにする

 これだけで、格段に文章はわかりやすくなります。

① 聞かれたことにストレートに答える

──シンプルですね。

今道:特別なことではないんです。「聞かれたことにストレートに答える」というのは、具体的に言い換えれば「先に結論を打ち出す」ということです。

 たとえば、公務員試験の小論文で「市民が公務員に期待していることは何か」という問題が出たとします。実際こういう問題が多いわけですけれども。

──はい。

今道:ここで、最初からいろんなことを述べてしまう人が多いんですね。

・公務員の仕事は多様化している
・公務員にはこんな仕事もある、あんな仕事もある
・市民は公務員に対して、こんなことを思っている
・公務員は税金で働いていて……

 これでは、「市民が公務員に期待していることは何か?」という問いに対してストレートに答えていません。その結果、読む人にとって「何が言いたいのかよくわからない文章」になります。

──なんだか耳が痛いです。

今道:とにかく、まずは質問に答えることです。たとえば「市民が公務員に期待しているのは、特別なことではなく、日々の仕事を誠実にこなすことだ」とストレートに述べる。これが大事です。

 すると、読む人は「これからどんな話をするのか」がわかります。「これから、こういう話が始まるんだな」と構えることができる。読み手が「わかりやすさ」を感じる上で、非常に大事なポイントです。

──プレゼンなどでも「結論を先に述べろ」という話がありますね。

今道:基本は同じだと思います。文章の「予告」として結論が述べられていれば、読む人の頭に入りやすいですから。

──たしかに。安心して読み進められますね。

② 話をかたまりで分ける

──次の「かたまりで分ける」というのは、どういうことでしょうか?

今道:文章全体がどういう「ブロック」にグルーピングできるかを考えることです。

 さきほどの「市民が公務員に期待していることは何か」という問題で考えても、いろいろな論点がありえますよね。

 たとえば、

・市の課題を改善できることが大事
・効率的に仕事を進めなければいけない
・セクハラ・パワハラはアウト
・飲酒運転もアウト など

 これらをバラバラに書かれると、読んでいる方としては、いったい何の話をしているのかがわからなくなってきます。

 それをたとえば上2つを「仕事で責任を果たす」というかたまりに、下2つを「コンプライアンスに反しない」というかたまりに分けることができれば構成がすっきりします。読む側にとっては「要するに、この2つの話をしているんだな」と理解しやすくなるわけです。

──会議やミーティングでも、話がうまいと思う人ほど「ここに挙がっている要素は3つに分けられます」みたいな感じで、上手にグルーピングする印象があります。

今道:まさにそうです。「かたまり」を作ると、人は理解しやすくなるんです。

今道琢也(いまみち・たくや)
1975年大分県生まれ。インターネット上の小論文指導塾「ウェブ小論文塾」代表。京都大学文学部国語学国文学科卒。元NHKアナウンサー。高校時代、独学で小論文の書き方をマスターし、現役時に大阪大学文学部、翌年の再受験で京都大学文学部、慶應義塾大学文学部、就職試験ではNHKの試験を突破(すべて論文試験あり)。NHK在職中に編成局長特賞、放送局長賞などを受賞。2014年に独立し「ウェブ小論文塾」を開校。約2000枚の答案を独自分析し「全試験共通の陥りやすいミス」を発見。
「落とされない小論文の書き方」を確立する。国家公務員試験、地方公務員試験、教員試験、大学・大学院入試、企業内の昇進試験、病院採用試験、マスコミ採用試験にいたるまで、あらゆる分野の小論文を指導し、毎年多数の合格者を輩出。同塾では、過去問題指導に加え、全国の自治体・大学の独自予想問題を作成して指導し、的中事例も多数。「答案提出翌日から3日以内」のスピード返却に加え、丁寧で的確な指導が圧倒的な支持を得ている。『落とされない小論文』が初の著書。