一応お断りをしておきますと、今流れているのは全面解除するかどうか、菅首相が外遊から戻った後の状況を見ながら9月28日に決めるというニュースです(9月22日現在)。しかし、決める内容を1週間前の9月21日の段階で大々的に報道に向けて発表しているというのは異例のケースでもあります。なぜそのような既定路線を敷いたのでしょうか?

28日の「全解除」は
29日の「新総裁誕生」と連動している

 ここからはあくまで未来予測の専門家の立場で考える、この謎についての推理です。最も重要な要素は、9月29日に自民党の新総裁が決まるということでしょう。

 いろいろあった菅内閣の1年間でしたが、最大の功労はコロナ禍で危ぶまれた東京五輪の実現、最大の批判は新型コロナ第5波による医療崩壊でした。菅首相が総裁選不出場を決めた理由が「菅首相では総選挙を戦えない」というものだったのですから、功労よりも批判の方が大きかったことになります。その反省から誕生する新総裁は、コロナに対して菅首相とは違う新しい方針を打ち出す必要があるわけです。

 菅首相の方針とは、これは明確に振りきった表現をさせていただきますが、尾身分科会会長をはじめとする医療の有識者の考えを優先させ、かつ医療崩壊をとにかく防ぐことを大前提とする方針でした。その一方で、国民経済は優先順位の二番目に置かれ経済的な苦境を強い、わたしたち国民の行動の自由については優先順位の三番目に置く。言い換えれば不要不急の状況なら極力、外出をしないようにと言い続けてきたわけです。

 それでも今年初めの第3波ぐらいまではこの方針は国民の支持も得られていました。ところが第4波の前後でやたらとまん延防止や緊急事態宣言を乱発するようになり、行動制限も厳しくなり、会食を禁じ、飲食店でのお酒の提供を禁じ、にもかかわらず成果は出ずに第5波を招いてしまいました。そして第5波のピーク時と東京五輪開催が重なったことで、国民の不満がピークになった経緯があります。

「効果がない緊急事態宣言を一体いつまで続けるのか?」。これが国民の現政権に対する最大の不満といえるでしょう。

 さて、菅首相としては同じ神奈川県出身で近しい河野太郎候補を推しているという事情があります。ここはあくまで推測ですが、河野候補には何らかのアイデアがあることを菅首相は知っているのかもしれません。