「ワンクッション思考」を重ねると
発想力が豊かになる

 私たちは、日々、積み重ねた経験によって脳の中にさまざまなネットワークを形成しています。いちいち意識しなくても自動的に、歩いたり箸を使ってものを食べたりできるのは、このシステムのおかげです。

 しかし、手持ちの自動化されたシステムばかりで満足していると、脳の使い方がワンパターンになり新たな発想を生み出しにくくなります。ところが、左利きは多くの脳の回路を使用する「ワンクッション思考」をせざるを得ない仕組みを持っています。このことが、左利きの発想力が豊かである大きな理由の一つだと言っていいでしょう。

 また、人は自分が見ている世界の範囲でしか、考えることができません。そのため、ものごとを真正面から見るだけでなく、あらゆる方向から多角的に検討することで視野が広がり、発想力が豊かになります。

 左利きは「右利き社会のあたりまえ」を、常にあらゆる角度から分析し、どうやったら自分もできるようになるのか、左右の脳を使って考えています

 私は、小学校のときの体育の授業で、野球をするのにグローブが必要だったのですが、左利き用がなかったためダメ元で右利き用に手を入れて使っていました。このような体験は右利きにはないはずです。また、ある左利きの女性は、学生時代にノートをとると手が黒くなることに不便を感じていました。そこで、クリアな下敷きを手と用紙の間にはさみ、汚れないようにしていたと言います。

 こうして、ちょっとしたことにも工夫をしている左利きは少なくないはずです。このようなことから、左利きは知らず知らずのうちに、新たな発想を生み出しやすい「脳の体質」になっているのです。

 さらに左利きの活性化された右脳は、部分だけでなく全体をイメージでとらえるのが得意です。ものごとを俯瞰的に見ることで、そこに足りないものに気づきやすくなります。そうして、理想のゴールに欠けているものを、どんどん生み出すことができるのです。

(本原稿は『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き』から抜粋、編集したものです。本書では、脳科学的にみた左利きのすごい才能を多数ご紹介しています)

[著者]加藤俊徳(かとう・としのり)
左利きの脳内科医、医学博士。加藤プラチナクリニック院長。株式会社脳の学校代表。昭和大学客員教授。発達脳科学・MRI脳画像診断の専門家。脳番地トレーニングの提唱者。14歳のときに「脳を鍛える方法」を求めて医学部への進学を決意。1991年、現在、世界700ヵ所以上の施設で使われる脳活動計測fNIRS(エフニルス)法を発見。1995年から2001年まで米ミネソタ大学放射線科でアルツハイマー病やMRI脳画像の研究に従事。ADHD(注意欠陥多動性障害)、コミュニケーション障害など発達障害と関係する「海馬回旋遅滞症」を発見。帰国後は、独自開発した加藤式MRI脳画像診断法を用いて、子どもから超高齢者まで1万人以上を診断、治療を行う。「脳番地」「脳習慣」「脳貯金」など多数の造語を生み出す。InterFM 897「脳活性ラジオ Dr.加藤 脳の学校」のパーソナリティーを務め、著書には、『脳の強化書』(あさ出版)、『部屋も頭もスッキリする!片づけ脳』(自由国民社)、『脳とココロのしくみ入門』(朝日新聞出版)、『ADHDコンプレックスのための“脳番地トレーニング”』(大和出版)、『大人の発達障害』(白秋社)など多数。
・加藤プラチナクリニック公式サイト https://www.nobanchi.com
・脳の学校公式サイト https://www.nonogakko.com