10人に1人といわれる左利き。「頭がよさそう」「器用」「絵が上手」……。左利きには、なぜかいろんなイメージがつきまといます。なぜそう言われるのか、実際はどうなのか、これまで明確な答えはありませんでした。『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き』(ダイヤモンド社刊)では、数多くの脳を診断した世界で最初の脳内科医で、自身も左利きの加藤俊徳氏が、脳科学の視点からその才能のすべてを解き明かします。左利きにとっては、これまで知らなかった自分を知る1冊に、右利きにとっては身近な左利きのトリセツに。本記事では本書より一部を特別に公開します。
左利きが独創的なのは「宿命」
同じ場所で同じ時間に、同じ行動をとっていたとしても、利き手が違うと、脳にフィードバックする体験の性質が異なります。そのことが、少数派である左利きを「独創的」にしています。
左利きと右利きの「脳体験」が違う大きな理由の一つは、利き手が異なる人は同じ視点でものを見ていないからです。
人は利き手がある方向により注意を払っています。右利きなら右側、左利きなら左側です。つまり、左利きは同じ場所にいたとしても、右利きとは違う方向を見て、違う音を聴き、違う感覚を覚えていると言えるのです。
また、人はまわりと接するときに無意識のうちに自分の得意な脳番地を使って情報を得ようとします。(関連記事:最新脳科学でついに決着!「左利きは天才」なのか?)
たとえば、文字を読み、人の話を聞いて記憶するなどの言語能力が高い右利きは、9割を言語の情報から取り入れ、残りの1割を非言語の情報から読み取るとしましょう。
一方で左利きは、6割を言語、残りの4割を非言語の情報から得るとしたら、右利きと左利きでは、取り入れる情報のうち、3割の言語情報の違いが生まれ、さらに非言語でも3割もの違いが生じます。これが日々積み重なったら、どれほど大きな相違が生まれるでしょうか。
同じように生きても「脳体験」が違う
実際に、右利きと左利きに同じ課題をやらせても、脳の反応が異なっているという研究は数多く報告されています。これはつまり、同じように暮らし、生きていても、右利きと左利きの脳体験は大幅に違うということです。
たとえば、同じ日の同じ時間に、同じ山に登り、右利きが「楽しい1日だった」と言うのと、左利きが「楽しい1日だった」と言うのでは、まったく異なる体験を示しているのかもしれないのです。
こうした積み重ねによって左利きは、毎日の生活を送る中で自分なりの個性を築き上げていると言えます。
(本原稿は『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き』から抜粋、編集したものです。本書では、脳科学的にみた左利きのすごい才能を多数ご紹介しています)
左利きの脳内科医、医学博士。加藤プラチナクリニック院長。株式会社脳の学校代表。昭和大学客員教授。発達脳科学・MRI脳画像診断の専門家。脳番地トレーニングの提唱者。14歳のときに「脳を鍛える方法」を求めて医学部への進学を決意。1991年、現在、世界700ヵ所以上の施設で使われる脳活動計測fNIRS(エフニルス)法を発見。1995年から2001年まで米ミネソタ大学放射線科でアルツハイマー病やMRI脳画像の研究に従事。ADHD(注意欠陥多動性障害)、コミュニケーション障害など発達障害と関係する「海馬回旋遅滞症」を発見。帰国後は、独自開発した加藤式MRI脳画像診断法を用いて、子どもから超高齢者まで1万人以上を診断、治療を行う。「脳番地」「脳習慣」「脳貯金」など多数の造語を生み出す。InterFM 897「脳活性ラジオ Dr.加藤 脳の学校」のパーソナリティーを務め、著書には、『脳の強化書』(あさ出版)、『部屋も頭もスッキリする!片づけ脳』(自由国民社)、『脳とココロのしくみ入門』(朝日新聞出版)、『ADHDコンプレックスのための“脳番地トレーニング”』(大和出版)、『大人の発達障害』(白秋社)など多数。
・加藤プラチナクリニック公式サイト https://www.nobanchi.com
・脳の学校公式サイト https://www.nonogakko.com