アーキテクト思考と非アーキテクト思考の違い

 この全体像を理解するために、まずアーキテクト思考の特徴を、それとは真逆の非アーキテクト思考との比較で示せば下図の通りです。

 まず建物や都市の構想を描くべく、高所から全体を眺められることは必須の能力です。「自分の組織の視点で」とか「自分の立場の視点で」ではなく、対象とする系(システム全体だったり、ビジネス全体だったりといった構成要素が関係しあった全体像)を常に全体からとらえることが、まずアーキテクト思考の第一歩です。

 さらにそれを真っ白なキャンバスから描くべくゼロベースで考えられることが必須。ゼロベースとは、様々なしがらみや過去の遺物を忘れて、現時点でベストと思える情報や技術を最大限に生かして最高の構想を描くことを意味します。

 これとは逆の発想が、既にある既存の資産をどうやったら最大に活用できるかを考え、いまある枠組みにあたかも穴埋め問題を解くように「埋めていく」考え方で、これは非アーキテクト思考の発想といえます。

 そのためには、他者の動きに反応するのではなく、自ら始めに能動的に動く姿勢が必須となります。単に他者が出した案に反対するだけなのは論外として、既にあるものの改善を考えるのではなく、一から(ゼロから)代案を考えることがアーキテクト思考の実践には求められます。

細谷 功(ほそや・いさお)
ビジネスコンサルタント・著述家
株式会社東芝を経て、アーンスト&ヤング、キャップジェミニ、クニエ等の米仏日系コンサルティング会社にて業務改革等のコンサルティングに従事。近年は問題解決や思考力に関する講演やセミナーを企業や各種団体、大学等に対して国内外で実施。主な著書に『地頭力を鍛える』(東洋経済新報社)、『具体と抽象』(dZERO)『具体⇔抽象トレーニング』(PHPビジネス新書)、『考える練習帳』(ダイヤモンド社)等。

坂田幸樹(さかた・こうき)
株式会社経営共創基盤(IGPI)共同経営者・IGPIシンガポール取締役CEO
キャップジェミニ・アーンスト&ヤング、日本コカ・コーラ、リヴァンプなどを経て現職。現在はシンガポールを拠点として政府機関、グローバル企業、東南アジア企業に対するコンサルティングやM&Aアドバイザリー業務に従事。早稲田大学政治経済学部卒、IEビジネススクール経営学修士(MBA)、ITストラテジスト。