魚偏に春と書く「鰆」――。
春が旬かと思いきや、身が美味しいのは冬の「寒鰆」です。
身が締まって脂が乗った寒鰆は、青魚とは思えないほど上品で淡白ながら、奥深い味わいがあります。
ではなぜ「春」という文字がつくかと言うと、冬の鰆は動きが鈍く、東シナ海などの深場にいるため漁獲量が少ないため、産卵のために沿岸に近づいてきた春こそ豊漁の季節だからです。
【材料】鰆…2切れ/酒…大さじ2/みりん…大さじ2/醤油…大さじ2/柚子…1個/胡麻油…大さじ1
【作り方】 ①鰆の切り身を半分に切り、両面に塩(分量外)を振り、30分以上置いて水気を拭き取る。柚子は1.5mm幅の輪切りにし、種を取る。飾り用に2枚取っておく。②ポリ袋などに酒、みりん、醤油、柚子の輪切りを入れ、半分に切った1を漬けて空気を抜き、冷蔵庫で保存する。時々袋をひっくり返して、鰆に漬けだれが回るようにして1時間以上置く。③フライパンに胡麻油を引いて中火で熱し、汁気を切った2を、皮を下にして焼く。ひっくり返して両面に軽く焦げ目がついたら、2の漬け汁を注ぎ入れて煮詰める。※長く漬けた場合は、2をそのまま網で焼いても良い。
特に5月~6月頃は、肥え太った鰆が瀬戸内海に大量になだれ込むため、岡山県や香川県では、刺身を始め、白子を使った料理や、真子(卵巣)で作ったからすみなど、さまざまな料理を楽しむことができます。
ちなみに、現在はからすみと言えば鯔《ぼら》の卵巣で作ったものが主流ですが、元々は鰆で作られていたという説もあります。
鰆は身が割れやすく、傷みが早いため、本鰆の漁獲高の実に9割を誇る岡山県以外、なかなか生でいただける機会がありませんが、ジューシーで身がほぐれやすいため、漬け魚としていただくには最適な魚です。