「時系列LTV」とは
顧客が生涯を通じて企業にもたらす利益

 しかし、すべてのお客様が必ず4回購入するわけではないし、購入したとしても、いつ4回目の購入をするのかも人によって違う。

 よって収益を計算する際に必要となる指標が「時系列LTV」だ。

 LTVはライフ・タイム・バリュー(Life Time Value=顧客生涯価値)の略で、顧客が生涯を通じて企業にもたらす利益を指す。

 一般的には顧客の商品・サービスに対する愛着(顧客ロイヤリティ)が高いほど、LTVは高くなる。

 生涯といっても、通常、数ヵ月から1年単位で区切って計算する。

 当社では、LTVを月ごとに時系列管理している。

 よって「時系列LTV」と呼んでいるのだ(本書図表27/ただし、図表27では3~6ヵ月目、6~11ヵ月目、11~12ヵ月目、12~24ヵ月目をまとめている)。

株価上昇率日本一【北の達人式】「利益率29%」を実現する販売戦略図表27

 そのため1ヵ月ごとの売上、コスト、利益とLTVを対応させることができる。

 多くのD to C企業は、1回目、2回目、3回目のサブスク継続率だけ見ているが、この場合、1ヵ月ごとの売上、コスト、利益とLTVを連動して見ることができない。

 たとえば、数ヵ月間継続していたお客様が1ヵ月休んだ、もしくは初回に3ヵ月分まとめて購入したお客様が、3ヵ月後に2回目の購入があった場合、単一の計算式では正確なデータが算出できない。

 だから、LTVを月ごとで時系列管理する。

 先ほどの図表27で、時系列LTVを見てみよう。

 商品AとBがある。

 価格は両方とも3000円だ。

 前述の例のとおり、100万円の広告で100人のお客様を獲得した(CPOは1万円)。

 この100人のお客様の初回注文では、商品A、Bともにお客様一人あたり平均購入額は3000円。

 ある人は1ヵ月後に1個買い、ある人は2個買い、ある人は買わなかった。

 こうして100人の1ヵ月後の購入額を平均すると、商品Aのお客様一人あたり平均追加購入額は1900円となる。

 初回の3000円と1ヵ月後の1900円を足すと、時系列LTV(平均累計購入額)は4900円となる。

 これが1ヵ月後の時系列LTVである。

 商品Aの2ヵ月後を見ると、時系列LTVは6300円、さらに3ヵ月後は7500円になった。

 定期購入を中止する人もいるので、少しずつ「のび率」が減少している。

 商品Aでは、一人のお客様を獲得するのに1万円かかっているので(CPOは1万円)、初回から11ヵ月後までは赤字だが、12ヵ月後にCPOが回収でき、これ以降はまるまる利益になる。

 これがCPOと時系列LTVの関係だ。

 時系列LTVは商品によって変わる。

 もう一度、図表27を見てほしい。

 1ヵ月後の商品Aの時系列LTVは4900円、商品Bは4400円。

 2ヵ月後の商品Aは6300円、商品Bは5500円。

 3ヵ月後の商品Aは7500円、商品Bは6600円。

 だが11ヵ月後を見ると、商品Aは9800円、商品Bは1万2000円と逆転している。

 商品Bはリピートするお客様の数は少ないが、それでもコアなファンを獲得していて、一度購入した人が繰り返し購入している。

 図表27にある一定期間の販売利益は、時系列LTVからCPOを引くと出てくる。

 一定期間の販売利益=時系列LTV(×純粗利率)-CPO
 ※ここではLTVは売上(購入額)で算出している。

 実際の一定期間の販売利益を出す際はLTVに純粗利率をかけて算出するが、計算式が複雑になるので、ここでは純粗利率が100%の前提で説明する。

 たとえば、商品Aの12ヵ月後の一定期間の販売利益は、

 時系列LTV1万1000円-CPO1万円=一定期間の販売利益1000円

 となる。

 当社では、あらかじめ得るべき一定期間の販売利益を決めている。

 1年間でどれくらい販売利益を出したいかを決めると、自然とCPOの上限が決まる。ここをきちんとコントロールすることが大事だ。

 たとえば、まず、商品Aで1年間に一人あたり1000円の販売利益を出すと決めると、CPOの上限は1万円と決まる。

 仮に100万円の広告費で、お客様を80人しか獲得できなかったら、CPOは約1万2500円になり、一定期間の販売利益1000円は達成できない。

 その場合、その広告はストップする。これが基本的な考え方だ。

 一人の顧客を獲得する経費内容は、企業によって異なる。

 広告以外にも営業など様々な販売活動がある。

 販促費はかければかけるほど売上が上がるが、効率の悪い広告や販売活動は一定期間の販売利益を圧迫する。ときおり、

「グーグル検索したときに、自社の広告が一番上に表示されていればいい」

 という声を聞くが、それには大量の広告費がかかっているわけだ。

 もし一定期間の販売利益に結びついていなければ、まったく意味がない。

 施策の効果を数字で見ていくことが大切だ。