左利きの直感がすごい理由

 アプ・ディクステルホイスらのサッカーの試合を用いた研究は、課題を与えられたら、必要以上に考えず、即結論を出す脳の使い方が重要であることを示しています。

 サッカーの専門家が、時間を与えられたときの脳の使い方は、記憶系脳番地をより使っている時間だと考えられます。記憶を詳細に意識的に検証する時間より、脳がその瞬間感じた印象のほうが、物事の核心に行きやすいということです。

 このような脳の使い方ができたら、だれでも、いつでも、どこでもアイデアに満ちた創造的な生活を送れるのではないかと思います。

 時間を与えるより瞬時に判断するほうが直感の精度が高いことは、左利きが左手と右手のどちらを使うかを瞬時に考えて、どちらかの手を出す脳の使い方に近いのではないかと考えています。

 あくまでも私の仮説ですが、左利きの場合、右にあるものは右手でとり、左にあるものは左手で取るクセがあることが少なくありません。一瞬で効率性のよいほうを選択するという、直感に似た行為を日常的に行っているので、状況に応じた最適解を選ぶという脳の仕組みが左右の手の選択にしみこんでいるのです。

(本原稿は『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き』から抜粋、編集したものです。本書では、脳科学的にみた左利きのすごい才能を多数ご紹介しています)

参考文献
*:Dijksterhuis A, Bos MW, van der Leij A, van Baaren RB. Predicting soccer matches after unconscious and conscious thought as a function of expertise.Psychol Sci. 2009; 20(11):1381-7. doi: 10.1111/j.1467-9280.2009.02451.x.

[著者]加藤俊徳(かとう・としのり)
左利きの脳内科医、医学博士。加藤プラチナクリニック院長。株式会社脳の学校代表。昭和大学客員教授。発達脳科学・MRI脳画像診断の専門家。脳番地トレーニングの提唱者。
14歳のときに「脳を鍛える方法」を求めて医学部への進学を決意。1991年、現在、世界700ヵ所以上の施設で使われる脳活動計測fNIRS(エフニルス)法を発見。1995年から2001年まで米ミネソタ大学放射線科でアルツハイマー病やMRI脳画像の研究に従事。ADHD(注意欠陥多動性障害)、コミュニケーション障害など発達障害と関係する「海馬回旋遅滞症」を発見。帰国後は、独自開発した加藤式MRI脳画像診断法を用いて、子どもから超高齢者まで1万人以上を診断、治療を行う。「脳番地」「脳習慣」「脳貯金」など多数の造語を生み出す。InterFM 897「脳活性ラジオ Dr.加藤 脳の学校」のパーソナリティーを務め、著書には、『脳の強化書』(あさ出版)、『部屋も頭もスッキリする!片づけ脳』(自由国民社)、『脳とココロのしくみ入門』(朝日新聞出版)、『ADHDコンプレックスのための“脳番地トレーニング”』(大和出版)、『大人の発達障害』(白秋社)など多数。
・加藤プラチナクリニック公式サイト https://www.nobanchi.com
・脳の学校公式サイト https://www.nonogakko.com