5. 高い自由度の仕事を好む
仕事というのは、川上から川下に進んでいくにしたがって自由度が下がってきます。言い換えれば、様々な制約条件が増えてきます。したがって川下において重要なことは、このような様々な制約条件、例えば法規制や組織間の役割分担、そこに登場する人たちの人間関係や過去の経緯を十分に理解しておくことです。
そのような制約条件を覚えているという、その知識量がある意味で川下において求められるスキルセットになります。
逆に言えば抽象度の高い川上では、そのような制約条件を取っ払って「好きなようにやってくれ」という、いわば「丸投げ」を好む人の方が活躍できる可能性が高いということです。
そこで必要なのは上記の制約条件(=専門知識)というよりは、想像力や創造力といった思考力ということになるでしょう。
こういう人たちに細かい指示は不要です。「丸投げ大歓迎」の人でなければ、アーキテクトの仕事を楽しむことはできないでしょう。
ここまでアーキテクトに求められる川上の抽象度の高い場面における価値観や、それをよりどころとした行動パターンを挙げてきました(各々多くの人が考えている常識とは異なるものが多いことがおわかりでしょう)。
前回の具体・抽象ピラミッドの形状に示されたように、世の中の仕事は相対的に見れば圧倒的に川下側の場面が多いと言えます。
しかし、そうであるがゆえに、それとはある意味で真逆の思考回路が求められるアーキテクト思考のメカニズムを把握しておくことの重要性が理解してもらえたのではないかと思います。
ビジネスコンサルタント・著述家
株式会社東芝を経て、アーンスト&ヤング、キャップジェミニ、クニエ等の米仏日系コンサルティング会社にて業務改革等のコンサルティングに従事。近年は問題解決や思考力に関する講演やセミナーを企業や各種団体、大学等に対して国内外で実施。主な著書に『地頭力を鍛える』(東洋経済新報社)、『具体と抽象』(dZERO)『具体⇔抽象トレーニング』(PHPビジネス新書)、『考える練習帳』(ダイヤモンド社)等。
坂田幸樹(さかた・こうき)
株式会社経営共創基盤(IGPI)共同経営者・
キャップジェミニ・アーンスト&ヤング、日本コカ・コーラ、