4. 分厚い説明書より一枚の図や数式

 皆さんは300ページの詳細に記述された分厚いレポートと、そのエッセンスを究極まで抽象化してそこからメッセージを抽出し、そこにある構造を描いた一枚の図や絵のどちらに価値を感じるでしょうか? 例えば、大金をはたいてある仕事を外部に発注した場合、多くの人はそのアウトプットを「報告書の厚さ」で測ったりするのではないでしょうか。

 川上と川下の世界では、尊ぶ価値観や「美意識」が大きく異なります。

 ものの価値は量で決まる(食べ物や飲み物の量、機器の大きさ、仕事の工数、イベントの長さ、報告書や本の厚さ)のが川下の価値観なら、いかに抽象化されてシンプルに表現されているかで価値が決まるのが川上の価値観です。

 美意識に関して言えば、具体的な写実性を重視する川下に対して、複雑な事象をどこまで究極的にシンプルに表現できるかに美しさを見出すのが、川上の抽象度が高い世界です。

 ニュートンが導いたF=ma、アインシュタインが導いたE=mc2といった有名な式は、シンプルであるが故に皆に覚えられ多くの事象を究極的にシンプルに表現できることでその(抽象度の高い意味での)「美しさ」につながっているのです。