3. 周りへの忖度よりとがった主張
川下で重要な姿勢というのは、いかにして敵をなくして多くの関係者を抵抗なく巻き込むかであると言えます。ですから川下で重要なのは、いかに関係者間の軋轢(あつれき)をなくしてスムーズに仕事を進めることです。つまり、ここではあらゆる関係者に配慮を欠かさず、その人たちへのいわゆる「忖度」(そんたく)を欠かすことができません。
ところが、川上で求められる「とがったコンセプトを打ち出す」という抽象度の高い仕事においては、このような姿勢はマイナスに働きます。
様々な例外事項や特殊事例を考慮することで「関係各所に配慮する」ことは、川上においては抽象化という『捨象』によって「剃刀(かみそり)のように研ぎ澄まされた刃の切れ味を鈍らせる」ことにしかならないのです。
抽象化とは、枝葉を目いっぱい切り捨てて幹のみを残すことです。「直接関係ないことは、ばっさりと切り捨てる」わけですから様々な軋轢は生まれて当然です。もちろん実際の実行に移す川下においては、全ての人に配慮する必要があるわけですがそれを川上の時点でやってしまうと、全ての角が良くも悪くも取れてしまうがゆえに、なんの特徴のない無難なものへとならざるを得ないのです。
何事も実行に至るまでには勝手に角が丸くなっていきます。