「2021年もっともブレイクした人」と言っても過言ではない、ひろゆき氏。
彼自身、今のブームをどのように捉えているのか。どのような戦略があったのか。
また、今後ブレイクするための条件は何なのか。
全7回にわたって、本人が自ら語る「ひろゆき徹底解剖」をお送りする。最終回では、書店で「ひろゆき本」が溢れかえっている現状についてつっこんでみた。(構成:種岡 健)
「電車男」の出版戦略
――「ひろゆきブーム徹底解剖」の連載も、今回で最終回です。最後は、書店に溢れかえっている「ひろゆき本」について話しましょうか。
ひろゆき氏:おお(笑)。日本の書店にはしばらく行っていないので、どんな状況かはわからないんですけどね。
僕、出版については1つだけ考え方がありまして。過去に、2ちゃんねる上のコンテンツで「電車男」がブームになったことがあるんですが、それと同じ戦略なんです。
――「電車男」は2004年くらいのブームですね。どんな戦略だったんですか?
ひろゆき氏:まず、元になる『電車男』が本として出版されて、その後、マンガ化の依頼が2社から来ました。普通ならどちらかを選ぶんですが、断らなかったんですよね。
マンガの絵のテイストも異なるでしょうし、ストーリーの切り取り方も違いがあると思って、あとは読者が選べばいい話なので。そうやって、ドラマ化も映画化も、どんどん話がきて、基本的にすべてオッケーを出しました。
そうやって総動員することで、「電車男」の認知度は上がっていったんですよね。それで元の本はミリオンセラーになりました。だから、僕の出版におけるスタンスはそれと同じです。
――なるほど、ブランディングしないところがなんともひろゆきさんらしい……。たしかにたくさん出版されると、「ひろゆき」の認知度は上がりますね。ただ、個別の出版社泣かせではありまして。困っている編集者の話も、僕の元には届いていますよ。
ひろゆき氏:それは、なんか、すみませんというか、なんというか……。とにかく僕は刊行スケジュールとかには口出ししないようにしていますからね。
ただ、タイトルとかテーマは被らないようにはしていますよ。内容は、やっぱり1人の人間から出てくる話なので、被らざるをえないんですが……。
――被りが目立ってきてはいますよね。
どれか「1冊」を選ぶなら……
ひろゆき氏:だから、切り取り方とか見せ方で差が生まれるんだと思いますよ。『1%の努力』はダントツで売れていますから、編集の仕方とかタイミング、売り方が本当に素晴らしかったんだと思います。
そこのクリエイティブの部分は、プロに任せたほうがいいと考えているんですよ。もしかすると悪意のある編集をされるかもしれませんが、それによるリスクはお互い様ですからね。性善説で考えて、すべてお任せしています。
数ある僕の本で何か1冊を選んでもらうなら、間違いなく『1%の努力』と答えますよ。部数的にも他の本は追い越すことはなさそうですし。あと、僕のYouTubeライブでも、たまに種岡さんのことは聞かれるんですが、「話の引き出し方が上手で、だから本も売れてますー」って答えるようにしていますんで……。
――それはありがたいんですが、でも、一時的なブームになって一気に冷めるよりは、ちゃんと長く本が売れる人になったほうがいいと思いますよ。
「アタリショック」の再来?
ひろゆき氏:いわゆる「アタリショック」ですよね……。
ゲーム界で「アタリショック」という言葉があるんですが、1982年にアメリカでビデオゲームブームが起こりました。そのときに、年末商戦に間に合わせるために、各社が粗製乱造してソフトを出しまくったんですね。それでテレビゲーム市場が崩壊してしまいました。
僕がいまブームなのだとしたら、まさにその状態になりつつあるかもしれないですね……。でも、優秀な人はちゃんと考えて出版依頼すると思うんですが。
――出版社は出版社で、各社そんなに余裕はないと思いますし、自分たちの利益を優先させますからね。それで全体が損したらなんかもったいないという気がしますけど……。
ひろゆき氏:ほら、種岡さんも「いまブームっすね。もっと本出しまくりましょうよ!」とは言わないじゃないですか。ちゃんと、ネットメディアで記事を書くことに徹して1冊の本を伸ばそうとしているわけで。賢い判断だと思いますよ。
「ちゃんと売れるものを作れば、あとは何もせずダラダラ過ごせばいい」って、たしか昔に僕がアドバイスしたような記憶がありますし。それを実践してますね。
――いや、別に、何もせずダラダラはしてないです(笑)。
ひろゆき氏:前回の切り抜き動画の話で、編集している「切り抜き師」同士で競争が起きていると言ったんですが、それでいうと、出版においても編集による競争が起こっていますよね。
そこで種岡さんが作っている本って、他にもいくつも売れてるものがあるわけで、それって種岡ブームのような気がしてるんですけど。ほら、コロナ前は幻冬舎の箕輪さんブームがありましたよね。マイノリティだった種岡さんがコロナ以降に主流になって、ビジネス書なのに中身がゆるい本が売れまくっているという……。相変わらず種岡さんは陰キャですけど、もっと浮かれていいと思いますよ。
―― 十分、浮かれてますけどね(笑)。
ひろゆき氏:まあ、今だと飲み会でちやほやされることもないですもんね。残念でしたね(笑)。
とはいえ、5年前に出版の依頼をくれたのは、相当早かったと思いますよ。当時はテレビもラジオもネットメディアも、ほとんど出演オファーはありませんでしたから。ニコニコ動画を離れてひと段落した人、という印象だったと思います。そこからよく3冊も本を作って、やっとこれだけのヒットになりましたからね。なんか、僕のブームが来たことで、第三者が横取りするような、トンビが油揚げをさらうような結果にならなくてよかったと思いますよ。
あとは、年末や来年以降にかけて40万部、50万部と伸びてくれればいいなと思います。
――なんか人ごとのようですが……。ありがとうございます。では最後に、何かメッセージをいただければ嬉しいのですが、いかがでしょうか。
ひろゆき氏:とにかく、僕のスタイルは、「プライドをなくしてすべてオッケーをする」「どう見られるかは気にしない」「どんどん一人歩きすればいい」というものです。そんな僕の考え方が、全7回の記事でわかってもらえたんじゃないですかね? どうでしょう。どこかマネできそうな部分はありましたかね。
何度も言っているように、僕のブームはそろそろ終わるので、次の新しい人の登場に期待してもらえたらと思います。やり方は示したと思うので、どうぞみなさん、思う存分に頑張ってみてください。ではでは。
本名:西村博之
1976年、神奈川県生まれ。東京都に移り、中央大学へと進学。在学中に、アメリカ・アーカンソー州に留学。1999年、インターネットの匿名掲示板「2ちゃんねる」を開設し、管理人になる。2005年、株式会社ニワンゴの取締役管理人に就任し、「ニコニコ動画」を開始。2009年に「2ちゃんねる」の譲渡を発表。2015年、英語圏最大の匿名掲示板「4chan」の管理人に。2019年、「ペンギン村」をリリース。主な著書に、34万部を突破した『1%の努力』(ダイヤモンド社)がある。