注意!「前立腺がんが進行している」には逆効果?

 しかし「前立腺がんが進行している人」には逆効果の可能性があります。4万3000人の日本人を対象にした研究では、大豆やイソフラボンを多めに摂取していた人は、前立腺がんの死亡リスクが上がったというデータがあります(※3)

 まだマウスによる動物実験の段階ですが、「イソフラボンがエストロゲンのような作用だけでなく、男性ホルモンのような挙動を示すことがある」という結果も出ています。

 今後の研究に期待したいところですが、現状は「大豆製品(イソフラボン)の摂取は、前立腺肥大の予防にはよいが、前立腺がんが進行している場合は控えたほうがいい」と覚えておいてください。

 イタリアの研究では、穀物と肉類を多く食べていた人は前立腺肥大になりやすく、野菜と豆類を多く食べていた人は前立腺肥大になりにくいというデータがあります(※4)

 他にも「玉ねぎとニンニクを多く食べていた人には前立腺肥大の発症が少なかった」というデータも存在します(※5)

 日本人にとって穀物の量を減らすというのは少し難しいかもしれません。しかし野菜を多めに食べ、肉の量を少なくするのは実行可能でしょう。大豆食品をしっかり摂取することに加えて、「野菜多め、肉少なめ」の食生活も心がけておきましょう。

メタボが悪影響を与えている?

 また、生活習慣病の予防も欠かせません。世界では「前立腺肥大症は結局メタボリックシンドロームの一種ではないのか?」という概念が提唱されています(※6)

 高血圧、肥満、糖尿病など、この類の生活習慣病は「交感神経」を刺激します。体をどんどん活性化させ、緊張状態にしてしまうのです。前立腺の筋肉も緊張し、それが前立腺肥大につながっているのではないかという説があります。生活習慣病の改善に定期的な運動も有効です。

 人生100年時代は、健康こそ最大の資産です。お金や時間がどれだけあっても、健康でなければ意味がありません。自分の体をこまめにケアしていきましょう。

(本原稿は、森勇磨著『40歳からの予防医学 医者が教える「病気にならない知識と習慣74」』を編集・抜粋したものです)

【出典】

※1 Rosen R, Altwein J, Boyle P, Kirby RS, Luka cs B, Meuleman E, O’Leary MP, Puppo P, Robertson C, Giuliano F. Lower urinary tract symptoms and male sexual dysfunction: the multinational survey of the aging male MSAM 7)). Eur Urol 2003;44: 637-649

※2 Turkes A, Griffiths K. Molecular control of prostatic growth. In: Kirby RS, McConnell JD,Fitzpatrick JM, Roehrborn CG, Boyle P eds. Textbook of Benign Prostatic Hyperplasia. UK: Taylor and Francis, 2005: 29-68

※3 Norie Sawada,et al.Soy and isoflavone consumption and subsequent risk of prostate cance r mortality: the Japan Public Health Center based Prospective Study.Int J Epidemiol. 2020 Oct 1;49(5):1553-1561.

※4 Bravi F, Bosetti C, Dal Maso L, Talamini R, Montella M, Negri E, Ramazzotti V,Franceschi S, La Vecchia C. Food groups and risk of benign prostatic hyperplasia.Urology 2006; 67: 73-79

※5 Galeone C, Pelucchi C, Talamini R, Negri E, Dal Maso L, Montella M, Ramazzotti V, Franceschi S, La Vecchia C. Onion and garlic intake and the odds of benign prostatic hyperplasia. Urology 2007; 70: 672-676

※6 McVary K. Lower urinary tract symptoms and sexual dysfunction: epidemiology and pathophysiology. BJU Int 2006; 97 Suppl 2)): 23-28