子がどの企業に行くか迷っているのなら、企業で「誰が登場人物」なのかを確認させるとよいでしょう。本連載でも何度かお話した、取引先、顧客、企業内のどの部門と連携して仕事をするのかなどを調べて、具体的なイメージを持つようにするのです。そうすれば、自分に最も合う働き方ができそうな会社がわかってくるでしょう。
人は断ることの精神的負担に弱いので、つい決断を先延ばしにしてしまいがちですが、内定先に対しても迷惑をかけることになるので、締め切りを自分で設けて、必ずその日までに決めるように言いましょう。子どもとはいってももう大人なので、内定先が反社会的な企業でもない限り、子が自分で決めたことに口出ししてはいけません(ちなみに反社会的な企業とは、ネットワークビジネスやネズミ講をやっていたり、社長が逮捕されたりした企業を指します)。
親によっては、会社が儲かっているときと顧客の満足が反比例する業界ではなく、商品やサービスに満足してもらった結果お金をもらえるような、顧客の満足と企業の利益が連動している会社に行ってほしい、という考え方を持っているかもしれません。しかし、「土日に出社しなければならない会社はやめなさい」「スタートアップは社会的な信用が低いからやめなさい」といった職業差別的な見解は、親の古い価値観にすぎません。
ある程度の数の中から
選んだ1社なら支持すべき
ただ何度も言うように、子が最終的に選んだ1社が、ある程度の数を受け、多くの企業説明会の動画を見て、多くの競合他社の中で比較したうえで決めた会社なら問題ないのですが、数社しか受けずに受かった1社に決める場合は、危険なこともあります。後になって「本当にそこでいいのか」と悩むことにもなりかねません。もし十分な数の企業を見ていなくて悩んでいるなら、場合によっては内定を保持したまま、受けられる会社がある限りさらに就活を続ける、という選択肢もあります。
内定がある場合もない場合も、ある程度の業界や企業を見て納得して子が決めた会社なら、支持するのが親の基本姿勢です。就職と結婚は似ているところがあります。何人か付き合ったりお見合いしたりしたうえで、生涯の伴侶を選んで結婚するようなものです。ここまでお読みいただいた親世代の読者は、「大手だから大丈夫」「スタートアップだからいけない」といった判断はナンセンスだということが、おわかりいただけたと思います。
(ダイヤモンド・ヒューマンリソース HD首都圏営業局 局長 福重敦士、構成/ライター 奥田由意)