OBの役割はその後の成果を組織に還元すること
宇佐美 たとえば、エルピーダが破綻した時期に、「DRAMはどこの国でも簡単に真似ができる商品だ。そんなものをつくっていたから潰れることになったんだ」という趣旨のことを書いている新聞がありましたが、それはちょっと変でした。現に、中国や台湾といった国々の企業は、技術的問題でDRAMの競争から脱落したんですから。
竹内 DRAMは90年代にボロ負けしました。その90年代の古い物語を、いまの状況をきちんと理解せずに、無理矢理当てはめて書いている記事が多いですね。
社内のローテーションもあると思いますが、記者さんがダメになっていくのを見るのは残念です。業界専門紙を担当していた頃はよく勉強してしっかりした記事を書いていた記者さんが、全国紙に移って幅広い分野の記事を短期間で量産しなければならなくなって、だんだんおかしな記事を書くようになっていく。それでも、きちんとした記事を書き続ける人もいるんですけどね。報道は、そういう意味では、どこの媒体というより個人を見て判断することが重要だと思っています。
宇佐美 最近の例だと、「ルネサス」という会社に関する報道のあり方はとても難しいですよね。その難しさを直視せずに、ルネサスの経営問題に関して陰謀論的な議論で片付けようとする論者がいるのは、とても残念なことです。経済産業省OBの古賀さんなんですけどね(笑)。
ルネサスは各社に重要部材を提供しているのですが、その部材が小ロットでルネサスにとっては大赤字という、とても難しい問題を抱えています。もしルネサスという企業が突然潰れてしまったら、副次的な経済・社会への影響は大きいので、メーカーも経済産業省もそうしたことをしっかり捉えたうえで対策を考えているわけです。古賀さんも、仮にも経済産業省のOBなら、そういった全体の背景事情を踏まえて発言すべきだと思うんですよ。
いくらいろいろあって辞めたからとはいえ、古巣を罵倒し続けることで名を売るのは、中に残って真面目に働いている人達への裏切りですよね。そんな人のコメントをありがたがって頂戴している報道番組は一体何なのかなとも正直思います。もう「役所OBとしての古賀さん」はオワコンでしょと。いつまでも古巣にしがみついてないで、新しい道を探してほしいものです。同じOBとして恥ずかしい。本来なら、辞めた以上は違う場所で名を成して、もとにいた組織に還元するのがOBのあるべき姿だと思うんです。竹内先生はまさにそうですよね。
竹内 損得で考えても、OBが持っている最大の人脈はもといた組織なわけです。同じ釜の飯を食ったからという理由ですべて良しとするのがいいわけではありませが、ただ敵にまわすだけだと結局自分も損をしてしまいますよね。