当事者の発信がもっとも信頼できる情報
宇佐美 いまは、報道というか、情報伝達のあり方そのものが変わろうとしているのかなと思います。マスコミだけが情報伝達を担っていた時代とは違って、インターネットメディアがたくさん現れましたし、最近ではTwitterやアメブロやニコニコ動画など、個人ベースでも情報を発信することができるようになりました。これからは、マスコミのような編集を通した情報伝達と、インターネットメディアやTwitterのように生の情報を発信するタイプのメディアが互いに役割分担しつつ、切磋琢磨し合うような環境ができていくのではないでしょうか。
竹内 メディアという組織よりも個人に着目した時、専門性を持って独立している人の記事は質が高いと思います。まだまだ少ないですけど。
宇佐美 信頼度という意味では当事者が発信するのが一番信用できますよね。記事が変だと思ったら、即座に当事者がTwitterなりブログなりで発信すれば変な情報が広まらないで済みます。
竹内 專門があるけど、理工系の私たちのように言語表現が苦手な人がいます。そういう人をうまく使ってくれるメディアも必要ですね。
宇佐美 そういう意味では、その前提として、個人が発信する自由はもっと議論されるべきだと思います。最近の役所では、自分の見解をオープンにブログやTwitterで発信することが難しくなってきています。職務上の秘密を漏らすのは当然いけませんが、役所で培った知見を活かして情報を発信することは、国民と政府との理解を促進するうえでも、また正しい情報を広めるうえでも重要だと思うんですが。
竹内 本当ですか?官僚の中には所属を名乗っている人がいますよね?
宇佐美 Twitterが広まり始めた当初は、ある程度自由に情報発信することが許されていましたが、最近はルールが明確化してきて厳しくなってきています。もしかしたら原因は私にあるのかもしれませんが(笑)。でも、もう少し発信の自由を認めたほうがいいと思います。
竹内 それでも、役所の人は情報発信をしているほうだと思いますよ。企業の人は全然発信していないですから。エレクトロニクス関連では、大学の先生も少ないですね。企業の情報管理が厳しくなっているうえに、電機業界は日本の保守本流のような時代が長かったので、何をやらなくても注目されたし、お金も回った。情報発信が少ないのは、いまだにその時代を引きずっているのかもしれません。
宇佐美 少し本でも書きましたが、技術があれば何でもできると考えている人は結構多いですよね。
竹内 そこが一番ズーンとこたえました(笑)。よく金融関係の人に言われるのは、「僕らがバブル崩壊後の90年代に地獄を見たけど、それがいま電機産業を襲っている」と。確かに同じだと思いますね。大手電機企業に入社した人の多くは、一生安泰だと思っていたんじゃないでしょうか。
宇佐美 経産省にいるといろんな企業の人に会う機会があったのですが、電機業界はビックリするくらい各社の色があります。だいたい10分も話せばどこの会社の人か目処がついてしまう。要は、会社の色に染まる人じゃないと残りにくいんじゃないかと、傍目で見ていて感じていました。そういった閉鎖性が、オープンに色々な力を取り込もうとする、韓国や台湾やアメリカの企業に遅れをとる原因になったのかもしれませんね。
最終回となる第4回は、天下り問題の本質的な議論から始まり、経済産業省を離れた宇佐美氏のこれからへと話は及ぶ。最終回は12月7日(金)更新予定。
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