なぜ座りっぱなしは体に悪い?

 座っていることがメインの生活を英語では「セデンタリー・ライフスタイル」と呼びます。さまざまな弊害があり、きわめて体に悪い生活様式だとされています。

 産業医としても、在宅勤務が始まってから「糖尿病の人のHbA1cの数値が急激に悪化、もしくは新たに糖尿病になる人が増えた」という印象を持っており、危機感を抱いています。

 座っているときは、人間の体で最も大きい筋肉である「大腿四頭筋」をほぼ使いません。この筋肉を長時間使わないと、血糖値をコントロールしているインスリンの効きが悪くなり、血糖値が下がりにくくなるという説があります。

貧乏ゆすりの健康効果

「筋肉に刺激がない状態は体に悪い」ということを示唆したイギリスの研究があります(※4)。約1万2000人を対象に、貧乏ゆすりの多い女性と少ない女性を比較したところ、「貧乏ゆすりが少ない女性の死亡リスクが上がった」という結果が出ました。

 ある意味では、迷惑にならない範囲で「デスクワークの多い人は貧乏ゆすりをしたほうがいい!」と言えるかもしれません。

 在宅勤務の人は何らかの埋め合わせをして帳尻を合わせる必要があります。その選択肢としてオススメしたいのが「スタンディングデスク」の導入です。

 スタンディングデスクとは、立って仕事をするために普通より作業スペースが高い位置にある机です。さまざまな人の身長に合わせるため、多くは昇降式になっています。立って仕事をすることで、大腿四頭筋に刺激を与えられますし、カロリーの消費という意味合いにおいても効果的です。

 実際に北欧の国々ではこの「立って働く」「立って会議をする」という文化が根付いています。GoogleやFacebookなどシリコンバレーの大企業でも、スタンディングデスクが積極的に導入されています。

 また日本でも楽天、アイリスオーヤマといった企業で導入が進んでいます。在宅勤務の人は健康への投資として購入を検討してください。

 デスクワークをしつつも30分に1回は立ち上がる、もしくは家のまわりをぐるっと1周するなどの習慣をつけるのも有効でしょう。どうしても座位でのデスクワークを余儀なくされる人は、「運動をしっかりとり入れることで座りっぱなしの害を相殺できるだろう」という研究結果もあり、運動で座りっぱなしの害を打ち消してあげましょう(※5)

(本原稿は、森勇磨著『40歳からの予防医学 医者が教える「病気にならない知識と習慣74」』を編集・抜粋したものです)

【出典】
※1 Morris JN,et al.Coronary heart disease and physical activety of work.Lancet.26 2 :1053 1057,1953.

※2 Ekelund U,et al.Does physical activity attenuate,or even eliminate,the detrimental association of sitting time with mortality? A harmonised meta analysis of data from more than 1 million men and women.Lancet 388:1302 1310,2016.

※3 Ulf Ekelund,et al. Dose response associations between accelerometry measured physical activity and sedentary time and all cause mortality: systematic review and harmonised meta analysis. BMJ. 2019 Aug 21;366:l4570.

※4 Hagger Johnson G, et al. Sitting Time, Fidgeting, and All Cause Mortality in the UK Women’s Cohort Study. Am J Prev Med 2016;50:154 60

※5 Ekelund U,et al.Does physical activity attenuate,or even eliminate,the detrimental association of sitting time with mortality? A harmonised meta analysis of data from more than 1 million men and women.Lancet 388:1302 1310,2016.