貯金力を磨く「最高のPYF戦略」

 また、「貯金力」を磨く章にある「PYF」は注目です。

 これは「Pay Yourself First」の略で、「自分宛ての優先支払い」という意味。

 どういうことかというと、毎月10ドル貯めようとした場合、真っ先に自分宛に10ドルの貯金として支払ってしまう発想です。

 会社員の人たちにわかりやすい例では、給与から強制天引されて貯金できる「財形貯蓄」が「最高のPYF戦略」といえるのかもしれません。

 使ってしまう前に、毎月10ドルが自動的に貯蓄口座に入り、それはなかったものと思って生活するわけですから。

「ええ? そんなこと?」と拍子抜けされるかもしれませんが、「真っ先に貯金できないと絶対に貯蓄目標は達成できない」と多くの専門家たちも言っています。

 それくらい、貯めることは簡単ではないのです。

 しかし、「PYF戦略」で長くお金を貯めていけば、自然に複利の力でお金が増えていく。

 こちらが何もしなくても、お金がお金を生み出し、日々働いてくれるわけです。

 こういったお金の基本を小さい頃から教わっておけば、短期的な金融商品で大儲けしようと考えたり、宝くじやギャンブルに手を出そうとしなくなるでしょう。

 それらは極めて合理的ではないという考え方が幼少期から身につくか否かはとても大切です。

投資力を磨く「複利は宇宙最強の力」

 そして、3つ目の力が「投資力」。

 もちろん、この本も他のお金の本と同様、どんな金融商品があり、どんなメリット・デメリットがあるかをわかりやすく解説していますが、この本の最大の特徴は、投資において意外と語られない“複利の力”を強調しているところにあります。

 この本の第8章「複利は宇宙最強の力」はどうしても読んでください。

 この本で一番価値があるところだと思います。

 ここでは、運用はとにかく若い頃から始め、長く続けることで複利を増やしていくのがいいと、カラー図解と公式を用いてわかりやすく説明されています。

 これは、アメリカ人が複利の概念をとても大切にしてきたからでしょう。

 ただそれゆえ、この複利の力は、一般向けのお金の本であまり強調されていません。

 だからこそ私は、この本は子どもだけでなく、大人にも読んでもらいたいのです。

 大人にとっても、いや大人こそ、「複利は宇宙最強の力」だからです。

 今回、私がこの本の翻訳で最も苦労したのは、子どもに話しかけるような口調に訳しつつ、大人にもわかりやすく、くだけすぎない文体にする、という点でした。

 その甲斐あって、この本は書店のビジネスコーナーに平積みされていたり、親子が一緒に読みながらお金について学ぶ、という読み方もしていただけているようです。

 稼ぐことも貯めることも、そして投資することも、「言うは易く行うは難し」です。

 でも、この本ならきっと、子どもに限らず大人も、楽しみながらお金について学んでいただけるのではないかと思います。ぜひ読んでみてください。

(本原稿は、ジェームス・マッケナ+ジェニーン・グリスタ+マット・フォンテイン著『13歳からの億万長者入門──1万円を1億円にする「お金の教科書」』の訳者による特別寄稿です)