こういった状態を改善するためには、当人の現実の生活を充実したものにすることが必要なのです。

 適応障害に限らず、精神疾患には、まだまだわからないことが多いのは事実です。人間の精神機能が十分に解明されていないため、精神疾患に対するアプローチについても手さぐりの状態が続いているのです。

 一方で、適応障害をはじめとする精神疾患について、少ないながらも確かな事実も明らかになってきています。ネットやSNSには様々な情報が飛び交っていますが、自分や周囲の人の身を守るために、誰しも心の病に関する正しい知識を持つ必要がある。私はそう考えています。

(監修/昭和大学医学部精神医学講座主任教授 岩波 明)

岩波 明(いわなみ・あきら)
昭和大学医学部精神医学講座主任教授(医学博士)。1959年、神奈川県生まれ。東京大学医学部卒業後、都立松沢病院などで臨床経験を積む。東京大学医学部精神医学教室助教授、埼玉医科大学准教授などを経て、2012年より現職。2015年より昭和大学附属烏山病院長を兼任、ADHD専門外来を担当。精神疾患の認知機能障害、発達障害の臨床研究などを主な研究分野としている。著書に『発達障害はなぜ誤診されるのか』(新潮選書)、『女子の発達障害』、『うつと発達障害』(青春新書インテリジェンス)等がある。