ヤリスの多彩なラインアップ戦略
SUVからスポーツタイプまで

 ヤリスは昨年(2020年)2月にコンパクトカー「ヴィッツ」の後継モデルとして日本で発売された。すでに欧州では、ヴィッツがヤリスの名で販売されていたが、日本でも新車投入の際に「ヤリス」に統一された。

 ヤリスの特徴の一つが、豊富なラインアップの展開だ。

 例えば、20年8月には世界的な売れ筋であるSUVタイプとして、「ヤリス・クロス」が発売された。ヤリス・クロスは、1.5Lエンジン搭載で、HEV(ハイブリッド車)にも2WD・4WDのモデルを設定している。SUVとして競合車種となるホンダの「ヴェゼル」や日産の「キックス」を意識し価格を抑えるなど、販売戦略面でも強力な商品となった。

 さらに、同年9月にはスポーツタイプである「GRヤリス」が発売された。3ドアの1.6Lターボ+4WDのハイパフォーマンスモデルに、研ぎ澄まされた走りを気軽に楽しめる1.5Lグレードも配備している。

 GRヤリスは、市販モデルをスポーツタイプに仕立てるという一般的な手法ではなく、スポーツ用の車両を市販用に落とし込むという逆転の発想で生まれたモデルだ。「東京オートサロン2020」でワールドプレミア発表された際に、当時の東京オートサロンの実行委員を務めていた筆者は、トヨタの豊田章男社長が長男の豊田大輔氏(現ウーブン・アルファ代表取締役)とともにトヨタブースの壇上に立ち、このGRヤリスへの熱い思いを語りかけていたのを鮮明に思い出す。

 このように、ヤリスが好調なのは、多様な客層をつかむラインアップの充実によるところが大きい。

 同一ブランド名でのシリーズ化によるバリエーションの充実戦略で圧倒的な販売を続けていた車として、トヨタの「カローラ」を思い浮かべる人も多いだろう。