だが、ワゴンRスマイルの発表会見で、鈴木俊宏スズキ社長は「軽ワゴン市場をけん引してきたワゴンRの派生モデルというよりも、軽ユーザーの要望を取り入れて大きく個性の異なる新型車と位置づけている」と語っている。

 そこまでの高さが不要といった声や、利便性を求める声を基にスライドドアを採用するなど、現在の利用者のニーズを反映し、軽自動車の新たなポテンシャルを引き出した車になっているのだ。

 スズキはワゴンRスマイルの販売目標を5000台と策定したが、現在の車名別販売でも5000台売れる車種はベスト10以内に入るほどであり、スズキがワゴンRスマイルにかける期待が大きいことをうかがわせる。

 筆者は、このワゴンRスマイルの試乗会に参加して一般道・高速道路を走ってみたが、軽ハイトワゴンとしての走りやスライドドアの機能性を実感した。

 こうした完成度の高さも手伝い、シリーズにワゴンRスマイルが加わったワゴンRは、10月販売で早くも軽自動車市場で首位に立った。

 もちろん、圧倒的なトップを走り続けていたN−BOXの首位陥落は、ホンダの減産という“失策”によるところも大きい。

 だが、スズキが鈴木修元会長の「小・少・軽・短・美」という軽スローガンのDNAが鈴木俊宏体制に受け継がれ、「時代とともにワゴンRも変わり、ユーザーが求める軽自動車を」という姿勢が、ワゴンRのトップ奪還につながったのは、疑いようのない事実だろう。

 スタートダッシュを決めたワゴンRだが、その勢いが一時的なものなのか今後も続いていくのか、11月以降の販売動向に注目だ。

(佃モビリティ総研代表・NEXT MOBILITY主筆 佃 義夫)