③テストステロン
3つ目のホルモンは「テストステロン」です。こちらは特に「中高年の男性」にとって関係の深いホルモンです。
テストステロンは主に精巣で作られており、「男性ホルモン」と呼ばれています。加齢に伴い、精巣でテストステロンを製造している「ライディッヒ細胞」の数が徐々に減り、分泌量も減っていきます。
テストステロンの分泌量が減ると、体にさまざまな変化が生じます。「男性更年期」という言葉をおそらく一度は聞いたことがあるでしょう。
男性更年期とは、「LOH症候群」という疾患の中に含まれる概念です。テストステロンの分泌量が減り、性欲、筋肉量、やる気などの低下を引き起こすものです。
テストステロンは別名「社会性ホルモン」といわれていて、分泌量が多いほど社会的ステータスを求める傾向にあるという論文が出ています(※3)
アマゾンのツィマネという民族のテストステロンの変化を調べたところ、狩りをしているとき、また獲物を獲得したときに非常に高い値を示したという論文もあります(※4)
社会的ステータスを求めたり、狩りに成功したりする際に高値になることからも、「活力のある生活」をしていればテストステロンの値が高まるのかもしれません。
いずれにしても、テストステロンが一定の値より低ければ、「LOH症候群」と診断されます。その場合は「テストステロン補充療法」という治療を受けることもあります。
「気のせいか」と放置しない!
ホルモンの低下による症状はつかみどころのないものが多いです。
「気のせいか」と放置したり、あるいはメンタル不調として我慢したりする人が多くいます。自分で要因を決めつけることなく、一度病院に行くことをオススメします。
甲状腺・副腎ホルモンは内分泌科、テストステロンは泌尿器科が専門になります。身近な人にぜひ教えてあげてください。
(本原稿は、森勇磨著『40歳からの予防医学 医者が教える「病気にならない知識と習慣74」』を編集・抜粋したものです)
【出典】
※1 Benjamin Bleicken,et al. Delayed diagnosis of adrenal insufficiency is common: across section al study in 216 patients. Am J Med Sci. 2010 Jun;339(6):525 31.
※2 Flavio A Cadegiani,et al. Adrenal fatigue does not exist: a systematic review.BMC Endocr Disord. 2016 Aug 24;16(1):48.
※3 G. Nave, et al. Single dose testosterone administration increa ses men’s preference for status goods. Nature Communications volume9, 2433(2018)
※4 Benjamin C Trumble,et al. Successful hunting increases testosterone and cortisol in a subsistence population. Proc Biol Sci. 2013 Dec 11;281(1776):20132876.