東京・上野公園の国立科学博物館で2022年1月12日まで開催されている「大英博物館ミイラ展 古代エジプト6つの物語」を見に行った。ミイラと聞けば心が動くのはどうしてか。気が遠くなるほど長い古代エジプト史にひかれるからだろうか。ホラー映画は超苦手だが、ミイラ映画はけっこう好きだ。数千年の時間を経てよみがえる“嘘八百”は楽しい。しかし、このミイラ展で再現された古代人の生活史は本物なのだ。驚くべき展覧会である。(コラムニスト 坪井賢一)
ミイラを職人が製造し始めたのは
今から5000年前、紀元前3000年
ほどけかけた包帯の隙間からのぞく黒い眼光。古代エジプトのミイラはしばしば映画に登場し、観衆を震え上がらせる。ミイラ映画といえば『ハムナプトラ』シリーズ3部作がよく知られている。1作目の『ハムナプトラ/失われた砂漠の都』は1999年に公開されたアメリカ映画で、『ミイラ再生』(1932年)のリメイク版だという。
『ハムナプトラ』の原題は『The Mummy』、1932年の元映画のタイトルと同じで、「ミイラ」そのものである。このミイラは3000年前の「大神官イムホテップ」という設定だが、3000年前は古代エジプト史では「第3中間期」といわれる時代で、第21王朝(前1070年頃)に当たる。
極度に乾燥した地域であるエジプトでは先史時代からミイラは自然にできていたそうだが、ミイラを職人が製造するようになったのは今から5000年前、紀元前3000年という大昔からだそうだ。