若手の言う「自信」とは
具体的にどのようなものか?

若手の言う「自信」とは、さまざまな言葉で言い換えられます。

・どんな組織やチーム、どんな人たちともやっていけるという「自信」
・たとえ会社がなくなったとしても、自分で稼げるという「自信」
・自分にしかできない仕事で、誰かのためになっているという「自信」
・家族との時間を最優先しても、仕事はしっかりできているという「自信」

「具体的にどういう自信か」については人それぞれです。

価値観が多様化する今、唯一言えることは、「自分という人間に自信を持ちたい」ということです。

今の若い人は「どんなスキルが身につくか」と焦っています。

だったら、新しいデジタルスキルを身につけさせれば解決するのでしょうか。

それも否定しませんが、中長期的に見てどうでしょうか。スキルはやがて陳腐化します。

市場価値を高くし続けるために大切なのは、変化に対応できる人材になることです。

不確実性の時代だからこそ求められる資質です。

自信さえあれば、やったことのない仕事にも果敢にチャレンジできます。

やはり必要なのは自信、それも根拠のある自信です。

根拠のある自信とは、成長した先に手にするものと言い換えられます。

サイバーエージェントには
「若手が育つ」しくみがある

ところで「20代が成長できる企業ランキング2020」で、サイバーエージェントは4位に選ばれました(ダイヤモンド・オンライン記事より)。同サイトの記事、社員による会社評価「働きがいのある企業2014」では、IT業界「20代の成長環境ランキング」で1位に選ばれたこともあります。

これらは就活・転職情報サイトや、社員のクチコミサイトでおこなわれた調査によるもので、「サイバーエージェントは若手が活躍しやすい会社」だと評価を受けています。

サイバーエージェントには「若手が育つ」しくみがあり、積極的に若手を抜擢しています。

給料や待遇だけでなく、自己成長できるかどうかで志望先を決める学生も増えているため、このような評価を受けるようになったのです。

私は「若手が自ら自信を手にすること」が若手育成のゴールだと考えます。

繰り返しますが、若手育成で一番大切なのは「『成長実感』という根拠のある自信をつけさせること」です。

そもそも自信とは、誰かが与えて実感できるものではありません。

自分で考え行動して得た経験を通してのみ、人は成長を実感します。

自信は自分で手にするしかないのです。

では企業は何もできないのかというと、そんなことはありません。

企業でできる唯一の手助けは、「若手が自分で成長できる『自走環境』を整えること」です。

若手育成というと、若手を育てることと思いがちですが、そうではありません。

「上司の言う通りにやったらできた」では、本当の意味での自信はつきません。

先に述べた、若手「自分という人間に自信を持つ」ために、自ら成長するようサポートすること。

若手が自ら成長するような「しくみ」や「環境」を作ること。

このようなことが大事なのです。

※本連載では、若手が自分で育つ「自走環境」の整え方や、自走するための施策などについて、お伝えしていきます。(次回は11月25日公開予定)

曽山哲人(そやま・てつひと)
株式会社サイバーエージェント 常務執行役員CHO 曽山哲人氏

1974年神奈川県横浜市生まれ。上智大学文学部英文学科卒業。1998年伊勢丹に入社、紳士服部門配属とともに通販サイト立ち上げに参加。1999年、社員数が20人程度だったサイバーエージェントにインターネット広告の営業担当として入社し、後に営業部門統括に就任。2005年に人事本部設立とともに人事本部長に就任。2008年から取締役を6年務め、2014年より執行役員、2016年から取締役に再任。2020年より現職。著書は『強みを活かす』(PHPビジネス新書)、『サイバーエージェント流 成長するしかけ』(日本実業出版社)、『クリエイティブ人事』(光文社新書、共著)等。ビジネス系ユーチューバー「ソヤマン」として情報発信もしている。

2005年の人事本部長就任より10年で20以上の新しい人事制度や仕組みを導入、のべ3000人以上の採用に関わり、300人以上の管理職育成に携わる。毎年1000人の社員とリアルおよびリモートでの交流をおこない、10年で3500人以上の学生とマンツーマンで対話するなど、若手との接点も多い。