政策を取られた立憲民主党、中流層は離れるばかり

 2017年総選挙時に、前原民進党代表が主張していた消費増税による教育無償化の実現など「All For All」という政策を自民党が「パクって」以降、本来野党が取り組むべき社会民主主義的国内政策を次々と安倍政権が実現していった(第218回)。サイレントマジョリティー(中流層=消極的保守支持者)の支持は自民党に集まったわけである。

 これに対して、立憲民主党はサイレントマジョリティーの支持を自民党と争うのではなく、共産党と共闘して左翼の支持者を固める方向に向かった。国会では、共産党とともに「何でも反対」の姿勢を取ったが、圧倒的多数を築いた自民党はそれを無視し、政策を無修正で通していった(第189回)。

「分極的一党優位制」は、実は自民党と共産党の利害が一致する体制だ。もちろん両者の間にコミュニケーションはない。だが、お互いにとって都合がいいのだ。

 自民党にとっては、「民主党」が崩壊せずに、政権担当経験があり、現実的な議論ができる政党になっていれば、面倒な存在だったはずだ。それがバラバラになり、共産党と共闘してくれて幸運だった。それを共産党がシロアリのように食い荒らし、経済財政や安全保障で政策の幅を失ってくれると、強引にやりたい政策を通しやすくなるからだ。

 その上、現実的な議論のできない野党はサイレントマジョリティーに支持されない、「万年野党化」してくれるので、自民党にとって安泰だ。

 一方、共産党にとっては、安倍首相のような安全保障や憲法で「保守色」がにじみ出る自民党が「極端」な物言いをしてくれるほうがいい。「何でも反対」の共産党が目立つことになり、支持を集めやすく、存在感を強めることができる。自民党と共産党は、お互いに「必要悪」な存在といえるのだ。