これからは自民党の右側に位置する野党が必要
繰り返すが、自民党は、安全保障政策を除けば、政策的に左旋回している。特に、コロナ禍で一律10万円の特別給付金を出して以降、財政規律のタガが完全に外れてしまっている(第239回・p3)。これに野党が対抗して、さらに左に寄ってしまうと、与野党間で異次元のバラマキ合戦が始まってしまう。
それよりも、自民党の右側に位置する野党が必要ではないか。社会政策は、中央集権の一律バラマキではなく地方主導で的確な現場対応をする。多様性、女性の社会進出、デジタル化、経済安全保障などは「なんでも反対」でなく、「自民党は改革が手ぬるいから、もっとスピード感を持って改革を進めよ」と批判する野党が必要だ。
今後の自民党、最大の懸念は?
最後に、総選挙後の政治情勢について考えておきたい。自民党は議席を減らしたものの、今回躍進した維新の会の協力を得られれば、安定した政権運営は可能に見える。
ただ、支持率の浮き沈みに最も直結する政治課題は「新型コロナ対策」だろう。
今冬襲来が予想される新型コロナの「第6波」への対応を岸田政権が誤り、支持率急落したら、参院選前に「岸田おろし」の動きが出てくる懸念がある。またしても、病床が十分に確保できず、医療崩壊の危機に陥り、緊急事態宣言が発令される事態になったら、国民の岸田政権に対する不満が爆発する。コロナ対策は、今からでも万全を期すべく、総選挙後、すぐに動きだすべきである。
一方、岸田政権にとって、優先順位が高い政策は、「経済安全保障」だろう。米中の覇権争いが激化する日本はどう行動するかの判断は難しいが、国益に関わり、絶対に避けることができない課題だ。
しかし、何よりもこれらにしっかりと取り組むには、岸田政権が支持率の浮き沈みに振り回されない、安定した状態を維持する必要がある。
そこで焦点は、甘利明幹事長が、小選挙区で落選し、幹事長職の辞任を表明したことだ。その後任が誰になるかが重要だ。
岸田政権の問題は、党内基盤の脆弱さだ(第286回)。党役員、主要閣僚に岸田派議員が起用されていない「岸田派外し」で、いざというとき、体を張って岸田首相を守ろうという政治家が周囲にいない。そのため、支持率の浮き沈みが即、政権の命脈に関わる不安定な状況になってしまっている。
この状況を改善できるかが重要だ。