コロナ禍や自粛生活などの「環境の変化」により、多くの人が将来への不安を抱え、「大きなストレス」を感じている。ストレスを溜め込みすぎると、体調を崩したり、うつなどのメンタル疾患に陥ってしまう。
そんな中、このコロナ禍に22万部を突破したベストセラー『ストレスフリー超大全』では、著者の精神科医・樺沢紫苑氏は、ストレスフリーに生きる方法を「科学的なファクト」と「今すぐできるToDo」で紹介している。「アドバイスを聞いてラクになった!」「今すべきことがわかった!」と、YouTubeでも大反響を集める樺沢氏。そのストレスフリーの本質に迫る。
「心の扉」には鍵が閉まっている
初対面の人と信頼を構築するためには「3ヶ月以上」はかかると言われています。
自分のことを相手に話す自己開示によって、相手の心の扉は少しずつ開いていきます。
出会った直後は、2人とも心の扉はほとんど閉じた状態です。それが、少し自己開示をして、自分が心の扉を少しだけ開けると、相手も自己開示をするとともに、心の扉を同じくらい開けてくれます。二度、三度と会ううちに、互いの自己開示は進み、相手も徐々に心の扉を開いてくれます。
これを「自己開示の返報性の法則」と呼びます。
そして、心の扉のノブというのは、内側にしかついていないのです。
ですから、相手がいくら心をオープンにしても、あなたが扉を閉じている限り、扉が開くことはありません。白馬に乗った王子様が突然現れて、あなたの閉じた心を開いてくれるのはおとぎ話の中だけです。
「この人、信頼できない」という警戒心は、自分の心の扉に鍵をかけているのと同じことです。いつまで経っても、「信頼できる人」が現れることなく「この世に信頼できる人がいない」と思ってしまうのも無理はありません。
心の扉を「自分から」開ける
まずは、心の扉の鍵を外してみましょう。自分から鍵を外さないと、すべての「信頼関係」「人間関係」ははじまりません。
勇気を出して、少しだけ、心の扉をオープンにしてみましょう。あとは、自己開示の返報性の法則で、お互いに扉が開きはじめ、信頼関係のレンガが少しずつ積み上がります。
心の扉を開けるのは、本人にしかできません。だから、最初に心の扉を開くのは、相手ではなく「あなた」です。勇気を持って、開いてください。
その小さな勇気から、すべての信頼関係、人間関係はスタートします。
信頼関係をつくる「5つのステップ」
さらに信頼関係を構築していくためには、次の5つのステップを知っていると、次に何をするかが非常に明確になります。
ステップ1 警戒
アメリカでエレベーターに乗ると、笑顔で「Hello!」と向こうから挨拶してきます。
それは、相手に対する「情報」がゼロだからです。
だから、「自分は悪い人ではない」「自分は不審人物ではない」と最低限の安心情報を伝える必要があるのです。
相手の警戒を解くのに笑顔や挨拶は有効です。
ステップ2 疑心
「今日は良い天気ですね」「今日は暑いですね」といった雑談は、疑心を解くのに有効です。
「いいえ」と答えが返ってくることがないからです。
お互いに「イエス」(肯定)を交換することで、安心感が生まれます。
ステップ3 理解
自分から質問したり、説明や情報提供をすることで安心を増やします。
このときにお互いの共通点を探すと、一気に親密度は深まります。
心理学では、「ホモフィリー」(同属性)といって、人は同じような属性や価値観を持つ人とつながろうとする傾向を持ちます。
同じ都道府県出身、同じ大学出身、同じ趣味などの共通点があるだけで、一気に関係性が深まります。
ステップ4 共感
共感とは、喜怒哀楽を共有し、相手と気持ちが通じ合った状態。意気投合、シンクロした状態です。
「共感」の状態に持っていくために、心理学では「アイコンタクト」「うなずき、相槌」「オウム返し」などの傾聴テクニックを使います。
「自分の秘密」「自分の弱さ」「自分のマイナスの部分」など、自分の心の中を打ち明ける自己開示も有効です。
ステップ5 信頼
接触回数が増えれば増えるほど人の親密度はアップする「ザイオンス効果」という心理法則があります。
ビジネスであれば次のアポをとる。合コンであれば、LINEの交換をして接触回数を増やす。
また、見返りを求めない他者貢献、相手のための行動は、信頼を深めるのにとても効果的です。
相手との今の関係が、この「5段階」のどこにあるのかを把握することが重要です。
このステップを上手に踏んでいきましょう。
精神科医、作家
1965年、札幌生まれ。1991年、札幌医科大学医学部卒。2004年からシカゴのイリノイ大学に3年間留学。帰国後、樺沢心理学研究所を設立。「情報発信を通してメンタル疾患、自殺を予防する」をビジョンとし、YouTubeチャンネル「樺沢紫苑の樺チャンネル」やメルマガで累計50万人以上に精神医学や心理学、脳科学の知識・情報をわかりやすく伝える、「日本一アウトプットする精神科医」として活動している。
コロナ禍に22万部のベストセラーとなった著書『精神科医が教える ストレスフリー超大全』(ダイヤモンド社)のほか、シリーズ80万部の大ベストセラーとなった著書『学びを結果に変えるアウトプット大全』『学び効率が最大化するインプット大全』(サンクチュアリ出版)など30冊以上の著書がある。