思えば、夫と学齢期の子どもたちと5人暮らしだったころ、「3日は夕飯いらないよ」「あさってから補習授業が始まるの」「5日に定期券購入お願いね」と、家族がそれぞれのタイミングで私にスケジュールを言ってくる毎日でした。朝いっせいに出かけ、日暮れ時に戻ってくる夫と子どもたちを、私は大船、小船と呼んでいましたが、私のことを港の目印になる小さな灯台のように思って用事を頼んでいたのだと思います。

 ただ、頼りにされるのはいいのですが、頭の中で用件が渋滞して混乱するばかりだったのも事実。そこで、家族みんなで書き込める大判のスケジュール帳を用意して電話の横に置くことにしたのです。

 そのスケジュール帳は、縦割りで見開きが1週間分でした。日曜日までに家族めいめいが、お弁当の要・不要、部活の有無、病院の予約日時など週明けからの予定を書き込み、夫には夕食の要・不要も書いてもらいます。その下に私の予定を赤字で記し、お互いに尋ね合わなくても行動予定がひと目でわかるようにしていたのです。

 当時は仕事の電話も自宅の黒電話で受けていました。私が不在のときは電話をとった子どもが、相手の名前や会社名と受けた用件を空欄に書き留めてくれていました。執筆依頼、親戚の冠婚葬祭、品物の配達日など本当に何でもです。当時、子どもたちは私の大事な「セクレタリー」でした。

 共働きが当たり前になった時代です。一家の主婦はみな忙しいです。共有のスケジュール帳で家族の予定をスムーズに把握できる仕組みを作っておくと、何度も確認しなくて済むのでムダが省けます。いつまでに何をやればいいか決めやすく、時間が気持ちよく整理されていく実感を得られます。

「できないことはない!やったことがないだけ!」をモットーに

 おかれた環境によって仕事の方向性を変えなければならないことがあります。家庭の状況で、働くことそのものを中断せざるを得ない女性も多いと思います。

 私もそうでした。夫に転勤の辞令が出れば、私は仕事をたたんで子どもたちと一緒についていきました。舅の遠距離介護もしました。自分の手術を受けながら働いた時期もありました。