「特定名称は、一定の基準を満たした清酒について表示できることとされています。逆に特定名称を表示する場合には精米歩合を表示しなさい、となっています。原料米の品種名については、使用割合が50%を超えている場合は、使用割合と併せて表示でき、清酒の産地名についても、清酒の全てがその産地で醸造されている場合に表示が可能です。

 また、製造年月の表示も議論になることがありますが、原則として容器に充填して密封した時期とされており、他方で貯蔵年数を表示する場合にはその蔵から移出する時期を表示するというルールになっています。日本酒度や酸度といった事項については、事実に基づいて表示することは差し支えないことになっています」

日本酒のグローバルなブランド戦略
国税庁が設置した検討会

 2019年9月に「日本酒のグローバルなブランド戦略に関する検討会」が国税庁に設置され、同年12月に中間とりまとめが行われた。公表された資料によると、国内外の日本酒消費者にとっての分かりやすさやブランド価値向上の観点から、『ワインの国際ルールも参考にしつつ』、日本酒の表示ルール(製品品質表示基準)等を見直すべきである、とされた。

 その見直しに際しては、特定名称をはじめ、お米の品種、産地、精米歩合、製造年月(ビンテージ)、日本酒度、酸度、などが議論されることとなる、と刀禰氏は解説する。また、その後の議論において、年内に国税審議会に諮問して早期に見直しを行う方向で進んでいるのが、受賞の記述表示だ。今は公的機関から付与された賞以外は記載してはいけないルールとなっているが、公的機関以外から付与された賞の表示も可能とする方向となっているようだ。

「2021年2月に国税庁が対外公表した資料では、特定名称、精米歩合表示については、表示ルールとして既に消費者の間にも一定程度定着しているとの意見があることも考慮しつつ、国内外の消費者にとっての分かりやすさやブランド価値向上の観点から、さらに議論を継続する、とされています。

 私も、特定名称が一定程度定着していることは良くも悪くも事実ですので、その見直しに際しては幅広い観点からの議論を行い、きちんとした新しい制度を考えていく必要があると思います。また、国内だけでなく国外の消費者についても視野に入れている点については、非常に前向きに受け止めました。議論は継続されるということですので、できるだけ良い方向に進むことを期待しています」