哲学とは
「世界のすべてを考える学問」
このような時代に、哲学や宗教は力になってくれるのでしょうか。
新しい令和の時代を迎えた今、そのことについて原点に立ち戻って考えてみたいと思います。
あるとき、哲学者になった僕の友人に、「なぜ哲学を専攻したのか」と尋ねたところ、彼は「世界のすべてを考える学問という点に惹かれた」と答えました。
現代の学問は微に入り細を穿(うが)ち、あまりにもタコツボ化しているように思われます。世界をトータルに理解する必要性はますます高まっています。
僕は歴史が大好きですが、人類の悠久の歴史を紐解いてみると、世界を丸ごと理解しようとチャレンジした無数の哲学者がいたことに気づかされます。
同じような意味で、病(やまい)や老い、死などについて恐れ戦(おのの)く人々を丸ごと救おうとした宗教家もたくさんいました。
この本では、世界を丸ごと把握し、苦しんでいる世界中の人々を丸ごと救おうとした偉大な先達たちの思想や事績を、丸ごと皆さんに紹介したいと思っています。
皆さんが世界を丸ごと理解しようとするときの参考になれば、著者としてこれほど嬉しいことはありません。
歴史的事実として、
哲学と宗教は「不即不離」の関係
一方において、次のようにも考えました。
さまざまなビジネスの世界で、仕事のヒントを与えてくれたり、仕事が行き詰まったときに新鮮な発想をもたらしてくれるのは、専門分野の知識やデータよりも、異質な世界の歴史や出来事であることが多いという事実を。
この観点に立てば、人類の知の葛藤から生み出された哲学や宗教を学ぶことは、日常のビジネスの世界にとっても、有益となるのではないかと思うのです。
本書を執筆した目的の一つには、そのことも含まれています。哲学や宗教は、まだまだ人間の知の泉の一つであると思うのです。
皆さんは、「哲学と宗教はかなり異なるのではないか」あるいは「哲学だけでいいのではないか」などと思われるかもしれません。
この問いに対する答えは簡単です。
イブン・スィーナー、トマス・アクィナス、カントなどの偉大な哲学者はすべて哲学と宗教の関係を紐解くことに多大の精力を注いできました。
歴史的事実として、哲学と宗教は不即不離の関係にあるのです。