実家の相続、「預金いくらあるの?」とは聞けない。どうする?

「相続争いは、金持ちだけの話ではありません。『普通の家庭』が一番危険です」。知られざる相続のリアルに踏み込み、相続本としては異例のヒット作となった『ぶっちゃけ相続』。著者は、相談実績5000人超を誇る相続専門税理士の橘慶太氏。「タンス預金は税務署にバレる!」「贈与税がかからない4つの特例」「専業主婦のヘソクリは税務調査で大問題!?」「1億6000万円の節税ノウハウ」など、相続にまつわる法律や税金の基礎知識から、相続争いの裁判例や税務調査の勘所まで学ぶことができる。(相続手続に特化した新刊『ぶっちゃけ相続「手続大全」』は12月8日発売)。
今、「相続の最前線」で何が起きているのか。連載最終回となる本日は、「実家の相続」に焦点を当てる。(取材・構成/前田浩弥、撮影/疋田千里)

「相続の話」は、早ければ早いほうがいい

――「実家の相続」というテーマでお話を伺います。橘先生はもう、親御さんと相続のお話はしていますか?

橘:はい。私には兄がいるのですが、「もしも相続が起きたときには、私はあまり相続しなくていいから、兄に全部相続してくれ」と伝えています。

――それは書面で残しているのですか? それとも口頭ですか?

橘:口頭で、私から親に意向を伝えています。

――相続について話し合う適切なタイミングはあるのでしょうか。「あまり早すぎるのも、なんだかなぁ」と感じてしまうのですが。

橘:いや、早ければ早いに越したことはないですよ。早めに一度でも話題に出しておくと、「相続の話」に対する耐性ができるじゃないですか。状況はコロコロ変わるにしても、「変わったらまた、そのときに話せばいい」と思える。大事な話ですから、早めに慣れておいたほうがいいと思うんです。

初めての仕事での体験談

橘:私が税理士として、初めて上司のサポートなく「ひとり」で担当したお客さまのことは忘れられません。お父さまが亡くなり、お母さまと子ども3人が相続人となったのですが、お子さんのうち2人が、お父さまと非常に仲が悪かったらしいんですね。

――どうなったんですか?

橘:そこでお母さまと子ども1人が財産を相続し、子ども2人は相続を放棄するという手続きをとって、一次相続・二次相続の計算をする。これが私にとって、税理士として独り立ちした最初の仕事でした。

――うまくいきましたか?

橘:まだ知識も経験も浅かった私が、この仕事をスムーズに終えることができたのは、このご家族が早くから相続についてのコンセンサスをとってくれていたからです。早めに相続について話すことが、結果的には相続トラブルを防ぐことにもつながるんですよ。

――なるほど。ただ、子どもとしてはやはり切り出しづらいのが本音です……。